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隣人トラブルは飯の種? 『ミセス・ノイズィ』鑑賞

 かつての騒音おばさんに着想を得たという天野千尋監督による本作。かなりインディーズな作品で、主役の小説家・吉岡真紀役に『罪の声』や『あの子は貴族』で好演していた篠原ゆきこさん、子役の新津ちせちゃんと田中要次さんぐらいしかパッとみてわかる人がいない。

 序盤は家族3人で引越してから隣人の騒音トラブルに悩まされる&小説が上手くいかない吉岡真紀の視点。中盤からは騒音の産みの親である熟年夫婦の妻・若田美和子からの視点で描かれる。それを過ぎると両者+第三者的視点を織り交ぜた形へと変わる。その視点の変遷が大きな起伏を生み、視聴者の心をつかんでいく。

 単純に視点を変えれば、物事や人は違って見えるというのを見事に表していたと思う。朝の6時からなぜ布団を叩かなければならないのか、ラジカセを使ってまでなぜ布団を叩かなければならないのか。狂ったおばさんの真相に、肩入れする鑑賞者は多い。

 その後は現代社会に対しての問題提起を込めた内容へとかなりジャンプアップする。タイトルの『ミセス・ノイジィ』は劇中に出てくる真紀子が執筆する連載小説のタイトル。あるYouTube動画のバズとの相乗効果で、その小説は一気に世間の注目を浴びる。そして、その勢いのまま隣人トラブルが世間を巻き込む事態へと発展する。この構成には感心しました。とはいえこの脚光も長くは続かず。。面白ければなんでもいい、バズれば大成功みたいな風潮に対しての一種のカウンター的な側面もあります。

 というわけでストーリーやメッセージ性は良かったのですが、気になったのは出演者の演技でして。そういう方針なのか、力が入りすぎというか不自然にみえる演技が多々あって、血が上る映画ではありますけど、ちょうど良い感じが欲しい。新津ちせちゃんが一番良かったんじゃないか。あと最後の展開には文句あり。ありゃあ、無理だ。社会的に抹殺されてるし、あの人は絶対に変わらないから。皮肉なのかもしれないけど。

 多分、本作で一番に視点とモラルを持っていたのが何度か出てきたキャバクラの女の子。彼女だけが本質を捉えようとしてましたよね。吉岡真紀の夫はいい人そうに見えたけど、(家事・育児に対して)協力するよと言ってたのでキム・ジヨン界なら間違いなく訴えられている。そして、本作を観て思う。自分は隣にどんな人が住んでいるのかよく知らないことを。それに加えて集合住宅の住民と話したことすらないことを。

 人間の多面性とユーモアと社会風刺。気になる点はあるにせよ、見応えのある作品です。なんといってもおもしろい。

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