2004年1月~2017年7月まで13年間、音楽サイトとして運用。4年ぶりに形を変え、2021年6月より再始動。

飲み込むことが解放 『swallow / スワロウ』を鑑賞。

ニューヨーク郊外の邸宅で、誰もがうらやむような暮らしを手に入れたハンター。しかし、まともに話を聞いてくれない夫や、彼女を蔑ろにする義父母の存在など、彼女を取り巻く日常は孤独で息苦しいものだった。そんな中、ハンターの妊娠が発覚し、夫と義父母は待望の第一子に歓喜の声をあげるが、ハンターの孤独はこれまで以上に深くなっていった。ある日、ふとしたことからガラス玉を飲み込みたいという衝動にかられたハンターは、ガラス玉を口に入れて飲み込んでしまう。そこでハンターが痛みとともに感じたのは、得も言われぬ充足感と快楽だった。異物を飲み込むことに多幸感を抱くようになったハンターは、さらなる危険なものを飲み込みたい欲望にかられていく。

 大金持ちで職場でもエリートな夫から押しつけられるのは女性としての生き方。家事して、子どもを産んで、いい奥さんして。婚活女子からすると何が不満なのかしら?と反逆されるぐらいにとてつもなく大富豪の家に何不自由なく住んでいる。漫画かよっていうぐらいのでかさ(笑)。

 しかし、主人公の女性・ハンターが常に感じる抑圧と疎外感は、妊娠を機にさらに強まる。それを解放するために行う異物を飲み込むという行為。それは序盤にあった夫婦と夫の両親との食事会において氷を食べるシーンが発端だったと思う。マナーを叫ばれる中でゴリっと噛み砕いたときの食感と冷たさが快感として全身を伝う。その後はビー玉を飲み込み、画鋲を飲み込み、冷たい金属を飲み込み、どんどんとエスカレートしていく。やがて歯止めが効かなくなり、一種の禁断症状であり、彼女にとってのリセット行為にまで発展してしまう。

 中盤から終盤にかけて明かされるハンターの出世の秘密、夫との決別、ハンター自身の解放。ラストの女子トイレ長回しのシーンは、何かを暗示する。おそらく人生最大の吐き出すという行為。ハンターを演じたヘイリー・ベネットがむける眼差しはいつもどこか冷たくて、頼りのなさがあった。それが凄く印象的。

目次
閉じる