大人になること、親になることの難しさ 『泣く子はいねぇが』鑑賞

秋田県・男鹿半島で暮らす、たすく(仲野太賀)は、娘が生まれ喜びの中にいた。一方、妻・ことね(吉岡里帆)は、子供じみていて 父になる覚悟が見えないたすくに苛立っていた。大晦日の夜、たすくはことねに「酒を飲まずに早く帰る」と約束を交わし、地元の伝統行事「ナマハゲ」に例年通り参加する。しかし結果、酒を断ることができずに泥酔したたすくは、溜め込んだ鬱憤を晴らすように「ナマハゲ」の面をつけたまま全裸で男鹿の街へ走り出す。そしてその姿がテレビで全国放送されてしまうのだった。

 先月観た、同じく太賀主演の『生きちゃった』とも被る部分がある太賀の情け無い夫役。加えて妻に愛想をつかされて離婚された。最後に映画的な爆発的カタルシスがあったりするのは共通点。

 こちらでは秋田県を舞台とし、ナマハゲというフィルターがある分の違いがあるけども。地方コミュニティ特有の身内ぐらいに他人との近さが良くもあり、逆にそれだからこその息苦しさがあり。あとは、秋田名物の風力発電所(デイアンドナイトとか火口のふたりとかでみられたものだと思う)と地元出身である柳葉敏郎さんの存在感。

 冒頭で炸裂する酒に酔ったが故?のたすく(太賀)が頭隠して股間隠さずのなまはげ全裸爆走。ニュースにしようときていたTV中継でもバッチリ抜かれてしまい、全国から苦情殺到、妻(吉岡里帆さん)からは三行半をつきつけられ離婚。なまはげの祭りも自粛に追い込んでしまい、逃げるように東京移住といきなりフルスロットルで転落のさまを見せつける。

 『生きちゃった』と違うのは、こちらの方がどうしようもない夫であること。養育費も一切払ってないっぽいのに、2年したら禊は済んだという感じで秋田に戻って、妻に寄りを戻そうと迫る。その脳内お花畑感はついていけないし、東京へ行っても劇的な変化などなく、成長できない人間はずっとそのままっていうのを見せつけます。

 そんな彼だから、終盤に車で元妻と話し合うシーンで、ハッピーエンドにはならない。「会うのこれで最後」ってきっぱりと言われる辺り、人生そんな都合よくいかない。逆に妻はひとりで懸命に努力して自分の道を拓いている。しかしながら、元妻に名前で呼んでもらえず、「キミ」と呼ばれるのは精神的にめちゃくちゃこたえるだろうなあ。

 保護者向けに開かれた幼稚園のお遊戯会で、赤子のころ以来の娘を見ようと行くのだが、誰が娘か全くわからない。そこでようやく現実を知る。失ったものの大きさを知る。父親であって父親で無いことを知る。そこでこみあげる悲しいタイプの笑い。ラストはなまはげに全力で振れていくことで、ここを舞台にした理由を物語る。あれを許す元妻の厳しさと優しさが沁みるエンドロール観てたら、役者のところで高橋周平って出てきて、えっ!?と思ったけどあの人か。あと古川琴音さんがちょい役みたいな使われ方してて驚きました。

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