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美化され続ける思い出とクソみたいな今『佐々木、イン、マイ、マイン』鑑賞

 高校時代と10年後の今を行き交いながら描く青春映画です。俳優を目指して上京したもののうだつが上がらず、バイトでハコ職人になっている石井悠二(藤原季節)。彼と元恋人であるにもかかわらず同棲継続中のユキ(萩原みのり)との関係をどうするかが見所のひとつ。

 そして、もうひとつが石井の人生の分岐点となった高校時代の思い出。仲良かった4人グループのひとりである多田と久しぶりに再会したことで、彼らの人生に大きな影響を与えた最重要人物・佐々木(細川岳)と過ごした日々がよみがえる。

 男子には人気があって女子からは煙たがられる、お調子者の佐々木。佐々木コールを繰り返せば、彼はアキラ100%からお盆を抜いた状態(つまり全裸)になり、クラスを盛り上げる。誠実ですごくいい奴だけど、女性には圧倒的に奥手という性質。

 その裏側には片親(父親)で貧乏というのがあって、だからなのか強がって明るく振る舞っていて人間臭い。たいていの鑑賞者に、青春時代にこういう奴いたなあと思わせる絶妙さがある。自分たちにとっての佐々木を思い出しながら、その瑞々しさや切なさが胸の中をくすぐってくる。でも、この4人がクラスのカースト上位にいるわけでもないってのが、なんとなくわかったり。

 しかしながら、高校時代にほとんどの時を過ごしているぐらいに仲が良い4人組でも、卒業するとめっきり会わなくなるというのが非常にリアルだなあと思った。大人になるっていうのはそういうことでもある。石井と佐々木は高校卒業してから、1回しか会っていないし。それに大人になってくすぶってる。上手く生きられずに。

 あの頃のなんにでもなれる、できないことをやってやるが、いとも簡単に跳ね返されている現状。思い出の美しさだけでは乗り越えられない現実に、妥協しつつあるってのがほろ苦くいい感じに見えた。なにより前述したような人間臭さがどのキャラクターにも垣間見えるところが良かったと思う。青春の青さよりも、今のパートで表出するしっとりした憂いや切なさなんかの方が僕は印象に残った。

 ニンテンドー64の懐かしさが染み、あのカラオケでのナンパの初々しさにほっこりする。藤原季節くんと細川岳くんは良かったけど、村上虹郎は出てくるだけで締まるなあと感じた。あとは萩原みのりさんの冒頭の「足の爪を切る時間が、人生で一番無駄な時間だと思わない?」がなぜだか印象に残っている。そして、佐々木コールがもたらす、ありえない奇跡のラストを笑ってやってください。

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