地獄を生きている現実『存在のない子供たち』鑑賞

¥4,032 (2021/07/04 07:56時点 | Amazon調べ)

わずか12歳で、裁判を起こしたゼイン。訴えた相手は、自分の両親だ。裁判長から、「何の罪で?」と聞かれたゼインは、まっすぐ前を見つめて「僕を産んだ罪」と答えた。中東の貧民窟に生まれたゼインは、両親が出生届を出さなかったために、自分の誕生日も知らないし、法的には社会に存在すらしていない。学校へ通うこともなく、兄妹たちと路上で物を売るなど、朝から晩まで両親に劣悪な労働を強いられていた。唯一の支えだった大切な妹が11歳で強制結婚させられ、怒りと悲しみから家を飛び出したゼインを待っていたのは、さらに過酷な“現実”だった。果たしてゼインの未来は―?

「僕は両親を訴える。僕を生んだという罪で」と冒頭のシーンから、いきなり強烈なパンチが撃ち込まれたように痛みが走る。12歳と思われる少年・ゼインの訴え。600万人中150万人も難民がいるというレバノンでの現在進行形の出来事。12歳と思われるというのは彼自身の出生証明書がなく、親でさえも誕生日がわかってない。だから”存在しない子供たち”。本作で演じた人々はゼイン(本名も同じゼイン)をはじめとして、現地で配役と同じような境遇の人をキャスティングしたという。だから演技というよりはありのままが出ているような感じがした。

 作品はゼインがなぜ両親を訴えるまでになったかの過程が描かれているが、過酷な現実に胸が痛む。少年たちが朝から晩まで働き、両親には罵倒され、ついには妹が売られる。妹の事件をきっかけにした、ゼインの家出からまた物語は進んでいく。ラストにかけて救いのシーンがあるとはいえ、登場人物のほとんどが追い詰められていく姿が辛い。だからと言ってこれが遠い話というわけでもなく、子を持つ責任というのは身近に感じられることだと思う。ペットを飼うにしてもそうでしょう。覚悟と責任。ただ、本作は親だけが悪いと断罪できないのも伝えている。

 『大人たちに聞いてほしい。世話できないなら産むな。僕の思い出は、けなされたことやホースやベルトで叩かれたことだけ。一番優しい言葉は”出ていけ クソガキ”。ひどい暮らしだよ何の価値もない』『神様は僕にずっとボロ雑巾のままでいてほしいと思ってるんだ』『僕は地獄を生きている』とゼインの嘆きはひたすらに重い。当然、少年が言うセリフではない。


.

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次
閉じる