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盲信することの怖さ『その手に触れるまで』鑑賞

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ベルギーに暮らす13歳の少年アメッドはどこにでもいるゲーム好きの普通の少年だったが、尊敬するイスラム指導者に感化され、 過激な思想にのめり込む。ある日、学校の先生をイスラムの敵と 考え始め、抹殺しようとする。狂信的な考えに取り憑かれてしまっ た少年の気持ちを変える事はできるのだろうか……?

 元々は家自体がイスラム教徒のようですが、イスラム教のある指導者と出会い、純粋無垢な少年の心はいとも簡単に彼の教えに傾きます。アメッド少年は入り込んでしまったら固い性格らしく、コーランが全てという状態に至るまで早かった。そんな彼は父と別れて酒を毎日飲むようになった母のことを「飲んだくれ!」とののしり、言われた側の母は恐ろしい言葉を言う息子じゃなかったのにと怒りと涙の日々・・・。

 思想・宗教に何の躊躇いもなくのめり込むあまり、指導者がその学校の先生は悪だ!とキラーパス/悪魔のワードを真に受け、アメッド少年は担任教師をまさかの殺人未遂→少年院送りへ。とはいえ、彼の信心はさらに深まっていくのです。

 とはいえ、宗教は怖いというのを見せたい作品ではありません。もちろん主題ではあるけれど、少年期において絶対に信じるもの(指導者であり、宗教)ができてしまうと、そこからは関係が近しい人が何を言おうと聞いてもらえないことが伝わります。更生施設でのプログラムも当然効かない。彼には、自分の中での盲目なまでの常識・正しい世界というのが13歳で確立してしまったのですから。

 それにしても、アメッド少年役の子は、観ていても全く何考えているかわからない表情でずっといる(ほとんど真顔で笑顔はない)。加えて、自分の正しさを1mmも疑わずに行動するから、余計に怖さを覚えます。そのひとつが全てではないという価値観であり、判断力というのは必要となりますが、簡単には手に入りません。

 作品の後半では、アメッドが更生の一環として手伝いに行っている農場の娘・ルイ-ズとのやり取りが出てきます。思春期の彼は、ルイーズにファーストキスを奪われますが、指導者に女性との濃厚接触は罪だと教えられているため、その行為を罰を犯したと思って悔いる。女性とキスしたけど、執拗なまでに歯と唇を洗うところを見せてるので、それがいかに罪かというのを物語っています。

 ラストシーン。結局、信じるものというか救いを真っ先に求めるのは神ではなく、母であったところが彼も人の子だったということでしょうか。

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