公共とはなにか。『パブリック 図書館の奇跡』鑑賞

米オハイオ州シンシナティの公共図書館で、実直な図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)が常連の利用者であるホームレスから思わぬことを告げられる。「今夜は帰らない。ここを占拠する」。大寒波の影響により路上で凍死者が続出しているのに、市の緊急シェルターが満杯で、行き場がないというのがその理由だった。約70人のホームレスの苦境を察したスチュアートは、3階に立てこもった彼らと行動を共にし、出入り口を封鎖する。それは“代わりの避難場所”を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張やメディアのセンセーショナルな報道によって、スチュアートは心に問題を抱えた“アブない容疑者”に仕立てられてしまう。やがて警察の機動隊が出動し、追いつめられたスチュアートとホームレスたちが決断した驚愕の行動とは……。

 公共図書館についての新聞記事をきっかけにして作られたそうですけど、パブリック=公共というのは何なのかを強く問いかけていた。ケン・ローチ監督的なテーマといえるかも。公共施設の在り方を問う、それに分断や偏見、そのことを軽快かつユーモラスに描いていて、楽しめました。図書館は何のためにあるのか。中盤においての館長の「図書館は民主主義の最後の砦だ」という言葉が響く。

 しかしながら、図書館司書の仕事は恐ろしく大変だということも伝えている。表紙が赤くて厚みのある本とか、〇〇階の上段にある本とか抽象的な探し物もがんばって探さなきゃいけないし、「原寸大の地球儀はある?」とかいう冗談な質問にも真面目に答えなきゃいけない。

 主人公は、体臭がきつい利用者に対して他の人の迷惑になることを理由に退館させてしまったそうだが、それで訴えられたりもしている。誰にでも開かれている、ゆえの対応の難しさもある。それでも、図書館司書として誇りをもって仕事している姿勢が伝わります。

 あの衝撃の全裸ファイヤーフォーメーションには、笑いと感動が。奇跡は起きてないけど、声を上げた。高らかに上げた。辛い過去を持っていた主人公スチュワートも本によって人生を立て直した経験がある。ということで、本作においての重要作である、ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』を手に取らないといけませんかね。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次
閉じる