煌びやかさとは裏腹にかなりシリアス『WAVES/ウェイブス』鑑賞

高校生タイラーは、成績優秀なレスリング部のエリート選手、美しい恋人アレクシスもいる。厳格な父親ロナルドとの間に距離を感じながらも、恵まれた家庭に育ち、何不自由のない生活を送っていた。そんなある日、不運にも肩の負傷が発覚し、医師から選手生命の危機を告げられる。そして追い打ちをかけるかのように、恋人の妊娠が判明。徐々に狂い始めた人生の歯車に翻弄され、自分を見失っていく。そしてある夜、タイラーと家族の運命を変える決定的な悲劇が起こる。一年後、心を閉ざして過ごす妹エミリーの前に、すべての事情を知りつつ好意を寄せるルークが現れる。ルークの不器用な優しさに触れ、次第に心を開くエミリー。やがて二人は恋に落ちるが、ルークも同じように心に大きな傷を抱えていた。そして二人はお互いの未来のためにある行動に出る…。

 ミュージカルを超えた”プレイリスト・ムービー”と謳っていたので、どんなものかと思えば先に音楽ありきでストーリーを組み合わせていったそうで、全31曲に彩られた作品は、長いミュージック・ビデオのようでもあります。場面によって音楽が代弁するし、音楽が盛り上げる。とはいえ内容は、宣伝ポスターのようなラブロマンスではなく、かなりシリアスです。憎しみと愛、赦し。大きなテーマはそこですが、家族という共同体の不安定さと脆さ、再生の困難さを突き付けます。

 主演のケルヴィン・ハリソン・Jrは『ルース・エドガー』に続いて優秀な高校生のタイラー役で、今度は成績優秀のレスリング選手として活躍し、美しい恋人もいる。しかしながら部の監督による”お前たちは最新鋭マシンだ”という絶対に負けられない戦いがそこにあるプレッシャー、さらには厳格な父親の過度な期待と追い込みに苦しめられ続けます。

 それが痛めていた肩を試合でぶっ壊し、恋人の妊娠発覚で精神的に完全にプッツン。転落ジェットコースターへ搭乗してしまい、呼ばれなかったあのリア充パーティーでの悲劇へ。恋人に「あなたは自分のことが一番かわいいと思っていて、人を見てない」と言われるほどに自分勝手なタイラーですが、何もかもがどうでもよくなっていくと同時に恋人へ執着する描写は観ていてキツかったですね。

 後半は彼の妹であるエミリー(テイラー・ラッセル)の視点に切り替わる。兄によって変わってしまった家族、そして生活。ティモシー・シャラメに続いてまたお前か!というぐらいによく出てらっしゃる若手俳優ルーカス・ヘッジズが頼りなくも愛おしい存在感を放ち、孤立していた彼女を救い上げます。それはお互いの両親を巻き込んだ再生へと繋がり・・・。

 映像は確かに煌びやかで美しい。寄り添う音楽もまた良い。人間の脆さを知るとともに、そこに手を差し伸べるのもまた人間です。痛みを知ったからこそ、家族はまた向き合えたのか。予想以上に重みのある作品です。オリジナル・スコアはトレント・レズナーなんだなと感心。

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