『ホモ・サピエンスの涙』鑑賞

前作『さよなら、人類』でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞(グランプリ)に輝き、さらに5年ぶりに発表した本作でも同映画祭で最優秀監督賞受賞という快挙を果たしたスウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソン。CG全盛の時代にCGはほぼ使わず、野外撮影ではなく巨大なスタジオにセットを組み、模型や手描きのマットペイント(背景画)を多用するというアナログにこだわった手法で驚きの傑作を生みだしてきた。この世に絶望し、信じるものを失った牧師。戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル…悲しみは永遠のように感じられるが、長くは続かない。これから愛に出会う青年。陽気な音楽にあわせて踊るティーンエイジャー…幸せはほんの一瞬でも、永遠に心に残り続ける-。人類には愛がある、希望がある。だから、悲劇に負けずに生きていける。

 ロイ・アンダーソン監督の作品を観るのは初。繋がりのない33のシーンがゆっくりと浮かび上がる。ワンシーンワンカット、それにセットを自前で用意しているという。人々の日常を描いたのが主ですが、戦時の話も含まれている。自分が感じたのは、美術館での体験を映画館でというものでしょうか。今まで観た映画とは全然違う体験。

 人には様々な紆余曲折があり、人間を集約するもそれらを称賛も否定もせず、淡々と描き出していく。わかりやすい解答は無いし、意味を求めてもいけない気がしたし、何かを強く訴えているわけではない。固定カメラから観れば人間だって曖昧な存在。とはいえ、人類の愛と希望を本作から見出すのにかなり考えないといけませんが。

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