誰かに出会って人生は新たな色彩と意味を持つ。『君が世界のはじまり』鑑賞

希望と絶望を爆発させる夜が幕を開ける──。大阪の端っこのとある町で、高校生による父親の殺人事件が起きる。その数週間前、退屈に満ちたこの町では、高校生たちがまだ何者でもない自分を持て余していた。授業をさぼって幼なじみの琴子と過ごすえん、彼氏をころころ変える琴子は講堂の片隅で泣いていた業平ナリヒラにひと目惚れし、琴子に憧れる岡田は気にもされず、母親に出て行かれた純は東京からの転校生・伊尾との刹那的な関係で痛みを忘れようとする。皆が孤独に押しつぶされていたその夜に、事件は起きた──。©2020『君が世界のはじまり』製作委員会

 監督を務めたふくだももこさんが、かつて執筆した短編小説『えん』『ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら』を組み合わせ、ひとつの物語として再編し映画化。大阪を舞台にした高校生6人を映し出す青春群像劇。各々がそれぞれの悩みを持つも、深夜のショッピングモールでの出来事や、校庭にできた水たまりで戯れるえん(松本穂香さん)と琴子(中田青渚さん)のシーンとか、この瞬間が最高だってのがいくつも出てくる。

 片山友季さんが出てるからってのもあるけど『ここは退屈迎えに来て』が雰囲気的に似てるかも。暮らす街に覚える閉塞感、何者にもなれないような気がしてならない自分。それでも、行き場のない感情は体の内側で燻っている。そんな中で”気が狂いそう”を爆発させるブルーハーツの「人にやさしく」が物語をブーストさせ、生きてるって実感を強くさせる。

 途中、同じ学校の生徒が起こしたある事件について思いを語り合う場面がある。他人のことなんて意外と知らないし、どうせわからない。でも、想像することで自分も何かが変わるかもしれない。普通だって”ええねん”。誰かに出会って人生は新たな色彩と意味を持つ。

 関西だとお好み焼きは”おかず扱い”だから、ご飯と一緒に食べるんだと納得させられた。出演者の関西弁よりも一番に関西を感じたのがこれだった。あと序盤のえんと琴子の自転車二人乗りの「カチンコチン」ですね。一番エモーショナルだったのがエンディングに流れる松本穂香さんのアカペラによる「人にやさしく」のカバー。古館寛治さん、江口のりこさん、山中崇さん等いぶし銀の俳優たちが脇を固めている安心感もある

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