移民と故郷に揺れる中で鼓舞する歌たち 『イン・ザ・ハイツ』鑑賞

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ミュージカル「ハミルトン」でも注目を集めるリン=マニュエル・ミランダによるブロードウェイミュージカルで、トニー賞4冠とグラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞を受賞した「イン・ザ・ハイツ」を映画化。変わりゆくニューヨークの片隅に取り残された街ワシントンハイツ。祖国を遠く離れた人々が多く暮らすこの街は、いつも歌とダンスであふれている。そこで育ったウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーの4人の若者たちは、それぞれ厳しい現実に直面しながらも夢を追っていた。真夏に起きた大停電の夜、彼ら4人の運命は大きく動き出す。

 ニューヨークの片隅の街、ワシントンハイツはプエルトリコ、ドミニカ、コロンビア、チリなどラテン系移民が多く住むところだそうです。そんな移民たちの物語であり、差別や困難に立ち向かい、混沌の中にいても夢や希望を胸に持ち続け生きていくことを描いています。生活のための労働に追われる中で、自分にとっての夢・幸せを持って生きる。それは人種や年齢関係なく大事なことです。さらに問いかけられる”故郷”について。

 冒頭からとにかく歌いまくり、踊りまくりです。いきなりの100人を超える規模でのダンスシーンは、インド映画並みで圧倒されるものがありました。コロナ禍においての密集・密接・大声という3本の矢でぶち抜きます(撮影はコロナ前)。なによりも143分の鑑賞時間中、禁断症状が出るのか5分に1回は歌うという(笑)。ラテン・ミュージックの迸りとラップの軽快感。このテンポの良さと夏にピッタリの熱さが良いですね。映画館での体験として色鮮やかでエモいものがあります。

 ストーリーは単純すぎるぐらいに明快。そこは本当に考えなくて良いぐらい。主人公とヒロインのやり取りをもどかしく感じるぐらいで、人間の力を超える無重力ダンスシーンとか笑える部分も用意しています。

 もちろん、前述したような移民問題も落とし込まれている。っていうか結構細かい。移民としても世代間における差別があるし、複雑なバックグラウンドを抱える中で各々の葛藤を描きつつ、多様なコミュニティの中で支え合い、今いる場所で懸命に生きる姿。ひとつひとつが移民問題の枝葉となっているのですが、ミュージカルとしてのエネルギーがある分、重めのテーマにならない形に持っていっているのが観やすい要因になっていた印象です。

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