『狼蘇山三部作』、上映後に監督舞台挨拶付きで鑑賞

 豊田利晃監督の最新作『全員切腹』を含む『狼蘇山三部作(狼煙が呼ぶ、破壊の日、全員切腹)』をセンチュリーシネマへ観に行きました。鑑賞予定にはしてなかったのですが、ちょうど監督が舞台挨拶に来られるということでしたので。去年、『破壊の日』を観ており、内容はあまりわからないけれども伝わる怒りと音楽が凄かったのが理由のひとつ。

 ちなみに公開は、全員切腹(26分) → 破壊の日(56分) → 狼煙が呼ぶ(16分) と最新作から遡る形。順番に関しては、上映後の舞台挨拶でなぜこうしたかのいきさつを語っていましたが、翌週からまた順番を変えるらしいので、その辺は流動的。

 なお、本記事はネタバレを大いに含む内容となっていますので、鑑賞予定の方はこれ以降を読む際はお気をつけください。

目次

全員切腹(2021)

2019年に「狼煙が呼ぶ」、20年に「破壊の日」と自らの企画・プロデュースによる意欲作を立て続けに発表している豊田利晃監督が、前2作同様に自ら企画・プロデュースして手がけた短編作品。明治初期。ある流れ者の浪人の侍が「井戸に毒を撒いて疫病を広めた罪」で切腹を命じられるが……。

「今の世間を見回していると、『世が世なら、あいつら全員切腹だぜ』と思うことがしばしばあります。命をかけて責任を取る、スジを通すという慣習が美徳とされていた百年以上前の侍の生き方に憧れを抱きます。未来が見えにくいなか、個人が誠実に生き抜いていくためのヒントを切腹の様式の中で追求したいと思いました。この混迷の時代にどのように生きるのが正しいのか? 生き方の美徳についての映画を作りたいと思っています。

 監督のコメントを抜粋しますが、まさしくその覚悟と生き方を問う作品。タイトルは全員切腹ですが、切腹するのは窪塚さん演じる流れ者の武士、雷漢吉右衛門のみ。見どころは切腹までの長回しのワンカット、そこに尽きる。窪塚さんの生き方を問うセリフの連続、失神するんじゃないかという表情でもって腹を切り裂く演技、圧倒されましたね。世の矛盾をぶった切る。

 ちなみに芋生悠さんはずっとお面をつけたままで顔が映らないし、最初しか出てこない。

破壊の日(2020)

「泣き虫しょったんの奇跡」の豊田利晃監督が2020年開催予定だった東京オリンピックを控えた社会に向け、「利権と強欲という物の怪に取り憑かれた社会をお祓いしてやろう」と企画、脚本、プロデュースを手がけた意欲作。7年前に炭鉱の奥深くで正体不明の怪物が見つかった田舎町では、疫病の噂が広がっていた。心を病む者が増えていく中、修験道者の若者、賢一(マヒトゥ・ザ・ピーポー)が行方不明となる。賢一は生きたままミイラになり、この世を救うという究極の修行、即神仏になろうしていた。そして、「物の怪に取り憑かれた世界を祓う」と賢一が目を覚ます。

 本作だけ2回目。去年の8月お盆ぐらいに伏見ミリオン座で拝見しています。途中、マヒトゥ・ザ・ピーポー演じる賢一が「(オリンピックは)利権にまみれたクソ運動会でしょ」って台詞を吐く。本当は利権とその裏にいる強欲まみれの怪物たちみたいなのを映画で書きたかったんでしょう。でも、全世界にとって予想外である新型コロナウイルスの流行で、描きたいものが必然的に変わってしまったという印象です。

 本来だったら、東京オリンピックは2020年7月24日。その日に合わせて公開された本作を観て、その喧騒にいる人たちとこの映画を劇場で観終えた人間が邂逅してどうか?みたいな状況をつくりたかったんだと思います。でも、疫病が本当に疫病になってしもうた、どないしよって感じで。そういった状況も踏まえて物語にテコ入れて変化させながら「怒りと祈り」が56分という時間で描かれます。

 最後、結局それかよという感想は残るけど、渋谷スクランブル交差点でのマヒトの叫びは、監督の怒りの代弁に感じられてインパクトがありました。ただ、演技はやっぱり素人であって、冒頭に上げた「利権まみれ~」台詞を演技少ない人間に言わせるのは無理がある(他もいろいろと無理があった)。あの役は、今回の出演者だと窪塚さんぐらいしか成立させられないんじゃないか。GEZAN知らない人が見たら、大半の人が何あの人?って思われてそうですし。

 良かったのはやっぱり音楽となります。GEZAN「証明」もそうだけど、Mars89氏によるThe Haxan Cloakを思わせるドゥームと密教度の高いサウンドが最高にキまっていました。あとは、窪塚さんと松田龍平さんがすれ違うシーンが一番のハイライト。

狼煙が呼ぶ(2019)

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2019年4月に拳銃の不法所持で逮捕され、不起訴処分になった豊田利晃監督が、その体験をベースに描いた16分の短編時代劇。ある少女が家の蔵で見つけた古びた一丁の拳銃。少女が手にしたその拳銃から、拳銃をめぐるさまざまな過去の因果がよみがえってくる。渋川清彦、浅野忠信、高良健吾、松田龍平、中村達也、伊藤雄和、仲野茂、MASATO、MIUら豪華なキャスト陣が顔をそろえる

 こちらも初鑑賞。内容は全く頭に入れずに観たらズッコケました。

少女が蔵で銃を見つける → いきなりお侍さんの時代に飛ぶ → お侍さんたちが狼蘇山神社の境内に集まる → 刀を抜き始め、決戦に向かって臨戦態勢 → 少女のシーンに戻る

 それが切腹ピストルズの騒々しいちんどんに乗せて繰り広げられる。内容らしい内容は無いです。決闘が始まるのかと思ったら終わるし。MVみたいなものなのと理解しておこう。とはいえ、おなじみの渋川清彦さんに加え、浅野忠信さん、高良健吾さん、中村達也さん、いつ出てくるんだ松田龍平さんと出ている人たちは豪華。でも、セリフはない。

 ホンの16分間を音楽と俳優の集合によって魅せるという荒業で成し遂げてしまうという。これ観て何を考える?と落とし込んでみたものの、監督の怒りとか狂気みたいなのにしか辿り着きませんでした。

豊田監督の舞台挨拶

 上映後に20分ほどの監督舞台挨拶。リモートになるのかと思いましたが、登壇されました。本当は渋川さんも来る予定だったという。思い出す限り、以下のようなことを話していました。

  • 『全員切腹』というのは、生き方の美学が失われている今の世において、それを武士の切腹という様式に当てはめて表現したかった。
  • このタイトルを思いついたのが去年の冬。その時は東京オリンピックは無くなり、パンデミックも治まると考えていた。
  • 撮影している神社の宮司さんはとても良い人で、来年も待っていると言われている。
  • 音楽は全て監督のディレクションのもとで、担当者とやりあいながら作っている
  • ポスターは、普通だったら切腹のシーンだけど、ピースサインの窪塚さんが凄く良いと感じてこれになった
  • 狼をモチーフにしていることについて(どんな回答してたかは忘れました)
  • 切腹のシーンなんて誰も知らない。現代の人が想像する切腹というのは、時代劇とかの人たちがTV的に編集して観やすいようにした形。本当のやり方は誰も知らない。

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