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轟く音とともに天国と地獄を描く MONO『Requiem for Hell』

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 フルアルバム2枚同時リリースの前作から約2年ぶりとなる9作目(2016年リリース)。5thアルバム『Hymn to the Immortal Wind』以来のスティーヴ・アルビニ先生とのタッグが復活しています。マスタリングはボブ・ウェストンが担当。

 近年のMONOはオーケストレーションを有効活用しつつ、メンバー4人としてのサウンドを重視しているように思います。2枚同時リリースの前前作と前作はその流れに向かった作品で、光と闇を両極端に描きました。本作ではそれらを巧みに凝縮。特に闇方面につながるであろう怒り、悲壮感、哀切等の表現がさらにヘヴィであり、洗練と初期衝動の両面が上手く表現されています。静寂から轟音へ。数々のフォロワーからお手本とされるその手法は、ポストロック最高金賞受賞レベルなわけですが、そこにアルビニ先生による録音の復活で一層の生々しさとダイナミクスを感じさせる仕上がりです。

 地獄、煉獄、天国の3編から成るダンテの「神曲」が本作のモチーフになっているようですが、そういった組曲としての構成美があります。THE OCEANとのスプリットに収録された#1「Death In Reverse」、さらには中核を成す18分超えの大曲#3「Requiem For Hell」が地獄/煉獄編。これらの曲で登場する猛烈な吹雪のようなギター・ノイズは重々しく心身に迫ります。特に#3はかつての「Yearning」よりも試練のような哀感に溢れ、「Com(?)」よりも大きなエネルギーが爆発。これまでに発表した曲の中で最もアグレッシヴといえる楽曲かもしれません。

 オーケストレーションを加えて荘重に作品を彩る#2「Stellar」、#5「The Last Scene」は天国編。#1や#3で地獄への最接近を果たしている分、本作においてはストリングスの鳴らす希望がまばゆいまでに発光します。それにトレモロが生命の誕生とこれからの成長を祝福するような#4「Ely’s Heartbeat」はひどく感傷を誘う。この曲ではTemporary Residenceのオーナーの子どもの鼓動を使用したそうですが、MONOの真芯そのままの音楽性でプラスアルファの試みも堂に入っています。

 アルビニ先生への回帰、そして自らを突き詰めることで『You Are There』よりも儚く重く尊い本作に辿り着いてみせました。彼等はいつだって轟く音とともに天国と地獄を描き、人間の根源を問う。その真骨頂が重々しく表現された1枚。

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