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日本語ロック、至高の一枚 bloodthirsty butchers『kocorono』

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 その真っすぐな言葉、蒼くセンチメンタルな音色が胸を打つ。12の月を冠した曲名通りに、12の楽曲で巡る日々・季節を自らの喜怒哀楽と重ねながら奏でた、1996年に産み落とした邦楽オルタナティヴ・ロックの金字塔、『kocorono』。彼等の最高傑作に挙げられることも多く、数多くのフォロワーを生んだ日本の財産とも呼べる重要作です。

 #1「2月」の冒頭における三人の力強いアンサンブルから、拳にグッと力が入る。北国の空を裂くような轟音ギターの生々しい響き、淀みなく澄み切ったアルペジオが残す切なさ、大地を踏みしめる様なリズムがもたらす躍動感。そして、Vo&Gtの吉村氏のお世辞にも上手いといえない歌が、技術を超える情熱を持って訴えかけてくる。等身大の不器用な男三人が追及した、どこまでも真っすぐな表現。全ては生々しく、さらに心で叫ぶように鳴っている。この迸る熱気と轟音の中に哀切や日本的な風情を滲ませ、独特の情緒を持ったサウンドに昇華しているのも惹かれる要因でしょう。Dinasour Jr.やSonic YouthといったUSオルタナ勢からの影響を強く感じさせるものの、日本人だからこそ創り上げることができた音になっています。この切なさ、この温もりがまた染みる。

 収められた12曲(2010年のリマスター盤に、原盤にはなかった『1月』が追加)は、それぞれの月の季節感や風景が浮かんでくるような描写力を持ちますが、特に#6「7月」は、日本の宝とも評すべき名曲です。淡々と歌い上げる吉村氏と美しいアルペジオがノスタルジックな心象風景を奏でる序盤から、リズム隊による力強い推進も手伝って、やがて感情を剥き出しに轟音の壁がそびえたつ。歪み切ったギターがうねりをあげて炸裂するアウトロを聴いてると、ブッチャーズの表現のひとつの極致なのではと思わせるほど。本当に特別な1曲となっています。

  日々は過ぎ去って季節は巡り、年を重ねていく。時を止めることは決してできないが、己の弱さや様々な葛藤をさらけ出しながら、それでも情熱を燃やしながら前に進んでいくしかないことを本作は教えてくれます。三人の男達が生み出した奇跡のような音は、発表から10数年経ったても未だに色褪せることはない。Fugaziのイアン・マッケイに『グレイトなバンドだ』と賞賛される理由がここにある。日本語ロックのひとつの到達地点。

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