晩年の充実作 bloodthirsty butchers『NO ALBUM 無題』

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 田淵ひさ子さんが加入して4人体制となって以降の最高傑作とも評される2010年発表の通算12枚目のフルアルバム。ジャケットは函館生まれの画家である故・深井克美氏による「ランナー(未完)」を使用しているとのこと。

 本作発売時点で既に20年を超えるキャリアを重ねていますが、現在進行形で突き進むブッチャーズ節は、健在。薄闇から光が差し込むようなギターから、彼等らしいUSオルタナ風の力強いサウンドで進行する#1「フランジングサン」から貫禄の一撃。全体的にミドルテンポの楽曲が多いので落ち着いた印象もありますが、厚みのあるアンサンブルがあり、同世代はもちろんのこと彼らよりも若い世代にも共感を呼ぶような言葉と歌がある。加えて、この深みのある音の広がりと切ないメロウさ。年相応に老練たる表現力やどこか清らかなポップ感に磨きをかけながら、ロックの荒野をひたすら突き進んでいます。

 #2「散文とブルース」における哀愁のハーモニーと渋い味わい、胸を締め付ける様な繊細なメロディと吉村氏の感傷的な歌声が印象的な#3「僕達の疾走」等の前半の曲では、特にその真っすぐな力強い音と言葉が胸に響いてくる。そしてまた、歌に比重が置かれています。なかでも特に好みなのが#9「Ocean」で、夏の光景が浮かぶようなアルペジオの旋律から、どこか余裕のある歌いっぷりと心地よい解放感が大変良い。後半のドラムの連打、ギターソロに続いて、「生きている、生きて行こう」という力のこもったメッセージを聴いた時に、涙腺が緩む人もいるでしょう。

 そして、最後には艶やかなピアノの旋律を交えながら、吉村と田淵ひさ子が掛け合いのようなツインヴォーカルを披露する#10「curve」という新境地すら見せてくれている。いつまでも日本人が誇れるロックを奏で続けるブッチャーズの充実の一枚。

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