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日本へのオマージュと幻想世界 Alcest『Kodama』

 約2年半ぶりとなる2016年発表の5作目。妖精系最高峰と呼べそうなほど光属性が強かった前作は、完全にシューゲイザー化した温かみのある作品でした。それが要因で彼等のカタログの中でもっとも賛否両論が巻き起こったものです。僕としては好きな作品でしたが、ブラックメタル要素の封印には「牙の抜け落ちた檻の中の虎よ」と言われてもおかしくなく、物足りなさを覚える人が多々いたのもうなずけます。

 そして、この『Kodama』です。あえての日本語タイトル「Kodama = 木霊」、宮﨑駿監督の『もののけ姫』にインスパイアされるなど、日本文化に対するオマージュが込められています(ちなみにNeigeが宮﨑駿監督作品について語るインタビュー動画がある)。その辺の感覚というのは、僕は聴いていてもあまりわからなかったりしますが、いつものようにAlcestらしい夢幻世界を堪能できる仕上がりにはなっています。揺るがない表現の軸ですね。

 音楽性としてはNeigeの金切り絶叫、ブラストビートなどが要所に登場していてブラックメタルへの揺り戻しがあり。質感としてもダークでシネマティックな性質が勝っている印象です。2ndアルバム『Écailles de Lune』に近しさを感じ、#2「Eclosion」や#3「Je suis d’ailleurs」辺りのポストブラック/ブラックゲイズ曲はかなりのインパクトがあります。シューゲイザー要素や深いノスタルジーの方が前面に出ているとはいえ、このバランスで諸要素を配合して作品の深度につなげる辺りは上手い。

 そんな本作で1曲挙げるならば冒頭の表題曲#1「Kodama」。柔らかなノイズ・ギターと銀の光のごときメロディと声によって奏でられるハーモニーが、別世界へと引き込みます。大きなアップデートはなく、これまでの手法の中で作品のベクトルを変える。それでも、黒さや激しさを加算しても清々しく幻想的な音楽世界が結局できあがるのは、彼等が特別だからなのでしょう。

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