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エモーショナルであることは変わりなく Touche Amore『Stage Four』

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 2007年に結成されたアメリカのポストハードコア・バンド、少しの活動休止を経て3年ぶり4作目(2016年9月発表)。Deathwishからエピタフに移籍しての作品となります。バンドとしてそこにとどまっていてはいけないという意志と内容を作品毎に表現の幅を広げて提示。1st~2ndは完全に短距離専門ランナーという感じのハードコアで向こう見ずな鉄砲玉のごとく走り抜け、前作の3rdでは緩急や情緒に広がりのある印象がありました。

 それらを経ての本作では聴く側の対象範囲をさらに広げてきています。ヴォーカルのジェレミーは変わらずに叫び続けていますが、ギターが前作よりもクリーントーンの多用やエフェクトをかけて広がりをもたせている。極端にアクセルを踏みこんで突っ走る曲はなく、心地よいテンポで駆け抜けていく曲を多めに、全体をメロディアスに補完。言うなれば洗練であり、キャッチーになりというのは感じるところでしょう。

 メジャー感のある疾走曲#1「Flowers And You」で幕を開け、3分の中でダイナミックに聴かせる#3「Rapture」、陽性のメロディと中盤でコーラスとのハーモニーを利用した#7「Palm Dreams」などで要所を締め、終盤には哀愁たっぷりの序盤からドラマティックに展開する#10「Water Damage」を配置。以前ほど速いわけでもないし、激しいわけでもないです。大きなレーベルへ移籍したからの変化というのは当然あるのでしょうが、変わらないことはエモーショナルであり続けていること。そこが全くブレないから音楽性に少し変化があろうと、心を打たれるし熱くさせられるのです。

 また本作は、ジェレミーの母が2014年に亡くなったことが大きく影響している模様(タイトルはおそらく癌のステージ分類からきているっぽい)。確かにかつての怒りのエネルギーよりも大らかで包容力があります。もっといえば人生における喜びや悲しみ、生きることの儚さや尊さが詰め込まれている。Julien Bakerがゲスト参加した#11「Skyscraper」は悲哀の鎮魂歌の如きクライマックスで涙を誘うもの。その一瞬に全てをかけたかのような情熱を目一杯込め、彼等は音楽を鳴らし続けるのです。

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