2004年1月~2017年7月まで13年間、音楽サイトとして運用。4年ぶりに形を変え、2021年6月より再始動。

作品毎に高まっていく美意識とスケールの集大成 THE NOVEMBERS『Hallelujah』

 東京を拠点に活動する日本のオルタナティヴ・ロックバンド4人組。様々なジャンルを独自の美学で再編した音楽性で各方面から高い評価を受けている彼らが、記念すべき結成11週年に送る2016年9月リリースの6枚目のフルアルバム。

 誠実なロマンが詰まった作品を送り続ける彼等。USインディよろしくな雄大なグルーヴとコーラスワークが高らかに開幕を告げる#1「Hallelujah」から甘美な音世界へ。到達点と思えた前作『Rhapsody in beauty』にしてもこだわり抜かれた逸品のごとき完成度の高さでしたが、本作ではそれを凌駕しています。

 ハードコア~パンクのダーティな暴力性で持って書き殴られる#2「黒い虹」や#3「1000年」、#8「!!!!!!!!!!!」の衝動。逆に#5「愛はなけなし」や#10「あなたを愛したい」では危険な美しさを湛えながら、繊細な歌声が胸を締め付ける。さらにネオアコ風の蒼さが切ない#6「風」、不穏なオルタナティブ・ロック#7「時間さえも年老いて」、澄き通るギターの音色に新たな地平へ導かれていくような#9「ただ遠くへ」と多面性をみせます。◯◯クラスタなんていう属性に陥らない幅広い音楽性の包括。その様々なジャンルによる彩りは、しっかりとした一本の芯を通した上で確かな厚みと鮮やかさを本作に加えています。

 そして、作品は時に皮肉、時に攻撃的と文学性を感じる日本語詩で綴られています。本作におけるキーワードは、執拗なまでに登場する「美しさ」。そのバンドの理想を体現したと思えるのが、いずれもホーン・セクションをフィーチャして希望や祝祭を奏でる#4「美しい火」と#11「いこうよ」の2曲です。前者ではエレガンスな音像と充実の歌謡性が温かいノスタルジーを呼び込む。締めくくりとなる後者では、シューゲイザー由来のノイズの大火が全てを無に還すかのよう。それこそ普遍性と特殊性の共存共栄を果たしたような感触もあります。

 作品毎に高まっていく美意識とスケールは、集大成といえる本作にて結実。自らの音楽的背景を膨らませながら確立してきたTHE NOVEMBERSらしさ。そして、隣り合わせの明と暗を表現し続けてきた自負。だからこそありったけの愛情を込めて小林氏は歌うのです。僕と君の世界を変える美しいものと爆音、それを求め続けたロマンチストたちが残した傑作。

目次
閉じる