9年を経ての新たな音の結晶 downy『第5作品集 無題』

 2004年の活動休止から実に9年の沈黙を経て帰還。結成当時からポストロック~エクスペリメンタル・ミュージックの先駆者として、絶大な支持を受けてきたバンドの5thアルバル。タイトルもお馴染みの『無題』なり。

 変則的なリズムが基盤を支え、多彩なギターワークが空間に塗り重なっていき、文学的な詩を操る青木ロビンの歌声がそっけなく拡がります。オルタナ~ハードコア譲りの強度、エレクトロニカの可憐さ、幻術のようなダブ~アンビエントの揺らぎの加算。精密なまでに計算し尽くされた構成を基にdownyらしさを貫き通しており、9年間の空白も何のそのといった感じでしょうか。安易な表現では決して辿りつけない音響の広がりと深遠さがあります。#3「曦ヲ見ヨ!」や#7「春と修羅」における妖刀で切られるような感覚は、孤高の表現者がゆえ。ここには一分の隙もありません。

 しかしながら、ひんやりと無機質だった感触からは、どことなく雲の隙間からうっすらと光が差し、冬から春に向かうぐらいのほんのりとした温かさが感じられるようになってます。#4「下弦の月」のように歌にフォーカスをあてて、以前よりもオープンな印象も。アコースティックな音色を基調に、柔らかな音風景が広がっていく秀逸なラスト#11「椿」でもそれは明らか。長い月日の向こうにあった美しい変化と調和。過去・現在・未来、全てを結びつけたdownyの新たな音の結晶。

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