2004年1月~2017年7月まで13年間、音楽サイトとして運用。4年ぶりに形を変え、2021年6月より再始動。

氾濫する重音の果てに Presence of Soul『Absence of Objective World』

オリジナルメンバーが2人になったことで出来ることを形にすべく、 国内外のゲストミュージシャンとのコラボレーション含め、様々なアーティストの協力によって完成された ニューアルバム”Absence of Objective World (客観的世界の不在)”。 今作のテーマは、様々な人間の感情や価値観の中で、”環世界”の視点でこの世界が全ての人間の”主観的現実”の集合体であり、 その中で個々がどう世界を捉え、価値観と現実をどう作り出していくかが試されているのではないか、という問いかけをもとに制作、 より心の奥に焦点を当てた内容で音の重厚さと共に深みを増した作品に仕上げられている。

 5人だったメンバーの脱退が相次ぎ、2018年5月にはコアメンバーであるYUKI(Vo,Gt,Key)とYOSHI(Gt)の2人編成となったPresence of Soulが4年ぶりに放つ4thアルバム。そういった逆境の中で制作されたことをまるで感じさせない作品となっています。聴いたときにかなりの衝撃を受けた前作『All Creation Mourns』以上に増した重量感。そして、きめ細かくなった黒の密度。重さと暗黒は一層の迫力と磁場を持って聴き手を引き寄せます。

 オリエンタルな鍵盤のリフレインと靄がかったギターの音色による#1「Boundary of Reality and Fiction」から、ドラマティックな悲壮感に彩られる。本作では全5曲中4曲にてデュオ編成の中でゲストを交えていますが、いい意味での相互作用・音楽性の拡張に繋がっており、旧来からのファンにとってもこれまでには無い新鮮な響きがあります。ピンチの時にこそチャンスがありとはよく言いますが、その体現があまりにも見事にはまっています。

 そこら辺のドゥームメタルが尻込みして逃げだすだろうインパクトを持つ#2「Antinomy」は本作を象徴するような1曲。PoSの全アルバムを通しても突出した重量感と迫力に圧される。中盤には安楽と慈愛の美麗パートを挟みますが、その両極端が一時的に並列したかと思うと、終盤は再び序盤のような終末の世界が訪れます。約12分にも及ぶ本曲は悪夢の中でもがき続けるかのよう。Funeral MothのヴォーカルであるAmamiyaさんによるデスヴォイスが、激薬のごとき効能をもたらしています。

 そして、白眉といえる11分超の#4「Probability of Destruction and Hope」。”希望と破壊の確率”と題されたこの曲では、RosettaのEric Jerniganが助力。序盤のヘヴィなサウンドを経ると、物悲しげに凪いだ海のようなギターの上をEricのクリーンヴォイスが救いの手を差し伸べるかのように響く。徐々に手数を増やしながら終盤では涅槃の淵へと向かうように重くドラマティックに展開し、大団円。今のPoSの旨味が凝縮されているなあと感じさせます。ボーナストラック扱いとなっている終曲#5「Calm Water」にしても、やたらと強調されたギターの裏で添えられるYUKIさんの消え入りそうな声が内省を促すかのよう。

 氾濫する重音がもたらす絶望と希望。その比重は聴き手によって変わります。ゲストを招きながら音楽的実験と未知を切り拓いたPoSは、決定的に希望が失われつつあるこの世に対して、一石を投じる。どんな状況に陥ろうと、真摯に表現と向き合いながら今後も邁進してくだろう、その存在が頼もしい。

 弊サイトではかつてにPresence of SoulのYUKIさんにインタビューを行っており、合わせて読んでいただければ幸いです。自身とバンドの歴史を振り返る10,000字を超えるロングインタビューとなっています。

あわせて読みたい
Presence of soul インタビュー ~二極化する世へ届ける想い音~ 国産ポストロック・バンド、Presence of soulのロング・インタビュー記事。15年を超えるバンドの歴史、3rdアルバム『All Creation Mourns』について、リーダーであるYukiさんに話を伺いました。
目次
閉じる