静かな情念と甘い毒 きのこ帝国『eureka』

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2010年代のシーンに圧倒的な存在感を放つ男女4人組ロック・バンド、きのこ帝国がファースト・フル・アルバムをリリース。ポスト・ロック、シューゲイザー、オルタナティヴなど様々な要素を昇華し構築することで新境地を拓いた1枚。2013年2月6日リリース。

    待望の1stフルアルバム。静かな情念が渦巻く音楽というべきでしょうか。オルタナ、ポストロックやシューゲイザーの影響下にあるサウンドをベースに、冷徹に心の内をえぐる歌が乗るのが大きな特徴。コクトー・ツインズやスロウダイヴがより負のベクトルへと進んでいったように感じます。または、sleepy.abが道を踏み外したらこんな風に・・・と個人的に思えなくもないところ。

 浮遊感をもたらすギターの音色とポエトリー・リーディングっぽいVoが頭の中で不思議と反芻する#1「夜鷹」から、独特の情緒を感じます。聴いているとひどく虚無感を覚え、心の内側に閉じ込めた深い感情が、その無垢な声とギター・ノイズで徐々に吐き出されている。それでも、ちょいとナンバガっぽい「国道スロープ」、鬱屈とした感情が白濁としたシューゲイズ・サウンドの中で渦巻く#5「ユーリカ」、優しい空間の中をイノセントな歌声が祈りのように響く#7「Another World」のような曲も揃えています。

 なかでも#8「ミュージシャン」が、一歩間違えればすぐに破綻しそうな脆さ、緊張感と隣り合わせに激しい負の感情を浄化し、終盤で吹き荒れる轟音サウンドが甘美な夢を見せる強烈な楽曲。甘い毒のように効く文系ロック~シューゲイズの異質な進化系と言えそうな作品です。

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