見事なまでの耽美世界 sukekiyo『IMMORTALIS』

 DIR EN GREYのフロントマンである京を母体とした5人組バンドの待望の1stアルバム。メンバーには、ex-RENTRER EN SOIの匠(Gt/Piano)と未架(Dr)、kannivalismのYUCHI(B)、ex.9GOATS BLACK OUTのUTA(Gt)が名を連ねる。京さんとしてもソロ・プロジェクトというより、”バンド”として捉えて欲しい想いがあるそうです。

 制作にあたっての明確なコンセプトは無かったそうですが、「DIR EN GREYとは違う表現がしたい」という想いの積み重ねからできたバンドだけあって、全体的にダークかつ耽美なアンビエントへの傾倒した内容です。ファルセットを多用した歌唱表現、優美なギターやピアノをキーにして紡がれ、次々とミステリアスな光景を見せていく。民族的なリズムとアコギを中心としたプログレッシヴな構築が成す#1「elisabeth addict」から衝撃的であり、『IMMORTALIS』という物語に聴き手を自然と向かわせます。

 退廃的で薄靄のかかったかのような楽曲の数々。そこには祇園で聴こえてくるような音から聖堂の格式高い音色までが集約され、眼をそむけるようなグロテスクさも、振れると壊れてしまう様な繊細さも、全てを赦して浄化する様な美しさもある。静を基調とした中で美だけでなく力強さも感じさせるポストクラシカル風の#2「destrudo」には思わず引き込まれるし、複雑怪奇な世界を見せる#13「hemimetabolism」から、和のテイストから情熱的なギターソロも含めて慈愛に満ちた#14「鵠」の流れにも感動を覚えます。

 #9「the daemon’s cutlery」や#15「斑人間」のような激しめの楽曲もあるとはいえ、やはりDIRとは違う味わいでsukekiyo流の毒気を乗せた仕上がり。その中でもMusic Videoが制作された#7「aftermath」や#16「in all weathers」は、本作でも特に重要な存在といえる佳曲。全体を通しても様々な幻想を織り上げながら、ひとつの大きなストーリーが生まれているような感覚があります。

 京さんならではの世界観がより濃く投影された作品だけあって、精神的に生々しい衝撃はあるが、その儚い叙情性は特筆すべきものがあります。作品名である『IMMORTALIS』は、ラテン語で”不死”を意味するそうですが、「ジャンルや時代を超えて末永く聴かれていく作品を作りたい」というメンバーの想い通りの完成度の高いものに仕上がっています。個人的にも期待以上の作品に出会えて嬉しい限り。

 本作がさらに大きな反響を呼んだ要因は、豪華アーティスト陣が参加した初回限定盤に付属するリミックスCDの存在。敬でSUGIZOさん(LUNA SEA)、HISASHIさん(GLAY)、acid android、人時さん(黒夢)、石井秀仁さん(cali≠gari/GOATBED)、TK(凛として時雨)、室姫 深さん、そしてKornのジョナサン(Devilslug名義)といった面々が、何の制約もなしに彼等なりのひねりを加えた個性的なトラックへと変貌させています。SUGIZO氏や石井さんのリミックスの仕事ぶりは流石であるが、個人的には#3「zephyr」が優美なヴァイオリンとピアノを交えてTK流に再構築されていて(しかもドラムにBOBO参加)、特に大きなインパクトを残していると感じました。

 そして、事件ともいえるキリト氏(PIERROT)とのコラボレーションで。初めて見た時は眼を疑ったし、「最近、(キリトと)初めてお会いしました。」と某インタビューで見た瞬間に再び眼を疑ったものです。初めてのコラボレーションとなった「aftermath」は、2人のヴォーカリストの声が美しい情感を伴って聴き手の内に染み渡る。僕自身、青春時代に聴いてきた彼等がこうして手を取り合って歌を聴かせてくれる事が素直に嬉しいですね。また、さらなる爆弾として、「in all weathers」のMusic Videoには鬼束ちひろさんを起用しています。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次
閉じる