2004年1月~2017年7月まで13年間、音楽サイトとして運用。4年ぶりに形を変え、2021年6月より再始動。

タイトル長っ Vampillia『my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness』

 2005年に関西で結成された異形の音楽集団。悪ふざけと共にJ-POP産業に挑み続ける関西のブルータル・オーケストラの2014年リリースの1stアルバム。今まで数えるのが少しめんどうなくらいの企画盤を発表し、ようやく発売にこぎつけたこの1stアルバムは、全編に渡ってアイスランド録音を敢行し、エンジニアにBen Frostを起用。また、ミックスをworld’s end girlfriend、マスタリングをKASHIWA Daisukeが担当している。発売はwegのVirgin Babylon Recordsから。

 シガー・ロスやムームなどを生んだアイスランドへ行き、現地の聖歌隊やストリングス隊に協力を仰いで制作された本作。その効果もあって、神聖で壮大な音響に感化された印象は受ける。ツジコノリコ氏を迎えての表題曲#1は、『the divine move』から地続きのロマンティックな叙事詩を聴かせて、一時の安らぎを提供。本作では現地の方々にとどまらず、波多野敦子氏等をゲストに迎えていて、 ピアノやストリングスはさらに感傷的な響きをもたらし、楽曲の物悲しさや美しさを引き立たせている。

 だが、単に静謐なる美を追い求めにアイスランドへ行ったわけでは当然なくて、ライヴでもお馴染みの楽曲になっている#2「Ice Fist」から悪戯心のある轟音圧にブラックメタルの苛烈さが押し出され、目まぐるしい展開が全てを飲み込んでいく。Kayo Dotに立ち向かうようなプログレッシヴかつエクストリームなサウンドで圧倒する#4「seijyaku」にしても、これぞVampilliaといえる要素詰まっている。

 不愉快な夢を見せる轟音は、某インタビューで述べてた「美しい音のミルフィーユができました」をたやすく黒に染めてしまうわけだが、そのダイナミックな起伏を表現しきってしまう辺りは、ブルータル・オーケストラの面目躍如かなと思う。

 クラシカルなピアノとストリングス、 黒々しい音の濁流、オペラが一緒くたになって世界を混沌とさせる#3「Hiuta」、それにはっきりとシガー・ロスを目指しただろう歓喜のクライマックス が待ち受ける#8「Von」は本作でも特に重要な楽曲だろう。2014年ごろのライヴ前はGTO反町のPOISONやSIAM SHADEのモノマネなど、とにかくおもしろいことをしたがる芸人肌の集団でしたが、曲に関してはどこまでも練られて作られている。

 そして、海外の大魔女である元SwansのJarboeを召喚したラストトラック#9「Tui」で厳粛な空気に包み、物語は静かに幕を閉じていく。全9曲約40分。Vampilliaのエンターテイメント、ここに極まれり!という作品では決してないにしても、ようやく「1stアルバム」と銘打っただけある、これまでのVampillliaの音楽を集約させた仕上がり。悪知恵とユーモアはやや希薄にせよ、 Vampilliaというバンドを手っ取り早く知る上では、本作をまず薦めたいものだ。

 ちなみに本作のCDを取り出すと、その下に Special Thanksの面々がずらりと記載されているが、ご存知の通りに、Alcest、Jarboe、Nadja、Matt Elliott(The Third Eye Foundation)と今まで誰も呼べなかった外タレの来日公演を次々と実現させてきた彼等の大きな功績を改めて実感する。そしてまた、一流人との文化交流が彼等の音楽の血となり肉となっている。他にも国内・海外問わず数多くの名前が並んでいるが、かつて「heyoah」のPVに出演した田代さんがちゃんと並んでいる辺りは流石だなと(笑)。

 また、EmperorやSighなどをリリースするCandlelightから発売される海外盤は、Ben Frostがミックスを手掛けており、ちょっと奥行きを感じるように個人的には聴こえる。1曲目がツジコノリコさん抜きのインスト仕様(主にライヴではこちらを演奏している)になっているので、チェックを推奨したい。

目次
閉じる