2004年1月~2017年7月まで13年間、音楽サイトとして運用。4年ぶりに形を変え、2021年6月より再始動。

20年、集大成の一夜 MONO『Beyond the Past』

 2019年12月14日にイギリスのBarbican Hallで行われた、活動20周年を締めくくるオーケストラを率いた公演“Beyond the Past”を収録したCD2枚組/LP3枚組のライブ作品。 全12曲で約2時間にも及ぶ記念碑には、NME誌にて”This Is Music For The Gods__神の音楽”と賞賛された理由が詰まっています。

 わたし自身、MONOのオーケストラ公演は2度体感しています。最初が2009年12月に渋谷O-EASTで行われた10周年記念公演。横長のステージにはメンバー4人に加え、ちょっと狭いぐらいに感じるほどにびっしりと20人超が陣取る。自分にとってはオーケストラの公演をまともに体験したのはこれが初。MONOのライヴは何度か体験していましたが、この共演にて今までにない音楽体験を味わうことができました。こちらはかつて寄稿していた音楽サイトにてレポートを書いています。

 2度目は2012年のフジロックにて。6枚目のフルアルバム『For My Parents』のワールドプレミアとして、全世界に先駆けて同アルバムからの曲を演奏。真昼間の青空で野外で灼熱でという条件下でも、MONOとオーケストラが奏でる音は希望と光を放ち、苗場のホワイトステージを深遠な世界で満たしていました。

 そんな記憶を遡りつつの本作です。公演の主軸となっているのは、2019年初頭に発表された10枚目のフルアルバム『Nowhere Now Here』であり、そこから5曲。またライヴ当時に最新曲であったA.A. Williamsとのコラボ曲『Exit in Darkness』、それに「Halcyon (Beautiful Days)」や「Ashes in the Snow」といったバンドの顔といえる定番/名曲も演奏。全アルバムからというわけではないですが、初期の「Com(?)」も含めて20年という歴史を感じさせる12曲を披露しています。

 冒頭を飾る#1「God Bless」~「After You Comes the Flood」で雷鳴のような音が轟き、その迫力と臨場感に気圧される。MONOのライヴの醍醐味が早くもといったところでしょうか。ひとつの大きな物語を狂おしく繊細な表現で紡いでいく。心血を注いで音を研ぎ澄ます。MONOの音楽は、心の最も深い部分に届くものだと私自身感じていますが、過剰なまでに感情を左右する音の結晶体は、オーケストラと組み合わさることでそれはさらに増幅します。

 オーケストラの音はあくまで補助的に聴こえるものの、ベースのTamakiさんが歌声を披露する「Breathe」ではギターに折り重なる弦楽隊の音色が揺らぎと厚みをもたらしています。悲壮感や怒りを内包しつつ壮大な音の波に飲み込まれていく「Nowhere Now Here」にしても壮絶というほかありません。

 バンドのシンボルともいえる「Halcyon」や「Ashes In The Snow」が本編終盤にて祝祭と凍てつく波動をもたらす中で、やはり一番インパクトがあるのは、アンコールにてラストを飾った「Com(?)」でしょうか。私的にモグワイの「My Father My King」と比肩するほどの轟きがある16分超の曲です。終盤にいくにつれてオーケストラ関係ねえと言わんばかりに猛嵐の如きノイズが埋め尽くす様は圧巻。身も心も粉々するような、真っ白な世界に身を置くことになります。

 MONOはインスト・バンドは居場所がなかったという90年代後半から活動を始め、海外から切り拓くことで活路を見出してきた人たちです。20年にも及ぶ活動で想像を絶するほどの困難に直面しては乗り越え、海外2000人規模のホールにて聴衆を魅了する。真摯に誠実に表現を突き詰めてきたことでの集大成。彼らが成し遂げてきたことの偉大さにただただ敬服します。

目次
閉じる