共に時代を生き抜く唄 ROTH BART BARON『極彩色の祝祭』

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三船雅也を中心とし、圧倒的なライブを含めバンドを輝かせ続けるゲスト・ミュージシャンたちとの演奏は芳醇な音色となり、ロット史上最高の”ロック・アルバム”へ。前作収録の「けもののなまえ」で驚きを与えたHANAも参加。『HEX』以降、エンジニアとして欠かせない存在である前田洋佑を中心に、Dan Carey (Kate Tempest, Black Midi)、Tim Pennells (Floating Points)がミックスで参加し、Chris Athens (Drake, Kehlani)がマスタリング。ひときわ光彩を放つアルバムのテーマは”祝祭”。“ウィズ・コロナ”の時代に勇敢に歩みを進め、”祝祭”を掲げ生まれ出た音楽は、我々に豊かな士気を蓄積してゆく。

 アジカンの後藤正文氏が主宰する<APPLE VINEGAR – Music Award -2020>にて”大賞”を受賞した前作『けものたちの名前』より、1年ぶりとなる5thアルバム(2020年リリース)。その間には新型コロナウイルス感染症もそうですが、盟友であるドラマー・中原さんの脱退という一大事件があり、2人組だったROTH BART BARONは三船さんのソロプロジェクトに形態を変えました。

 自身の大いなる変化と世の大いなる変化。その両方が引き寄せた結果なのか、流れを断ち切って新しい波を生み出そうとした信念からでしょうか。これまで発売されたアルバムの中で最も芯の強さとサウンドの強度、メッセージ性が備わっています。

 Bon Iverを彷彿とさせる#1「Voice(s)」で萌芽し、胎動のように力強いドラムに導かれて感情を湧き上がらせる#2「極彩 | I G L(S)」が高らかに鳴り響く。この2曲からしても新章の始まりという印象を受けます。本曲は、蔦谷好位置さんが某番組で「2020年のベストソング第1位」に取り上げたことでも話題になりました。繰り返される“君の物語を絶やすな”という本作一番のメッセージが、”個々の生きる”を鼓舞し続けます。MVも制作され、核となる1曲として君臨。

 信頼を寄せるコア・サポートメンバー6名とともに生み出す、小粋なオーケストラのような華やかさと艶やかさ、生命力が漲るサウンド。その上で三船さんのファルセットと言葉が心の芯に響きます。#3「dEsTroY」がもたらす歓びと昂揚感、HANAさんを再びゲストに迎えた#8「ヨVE」の推進力、#10「CHEEZY MAN」の溢れる哀切。各曲が喜怒哀楽の感情を連帯させながら、祝祭の音となって包み込んでくれています。

 そんな本作において、#4「ひかりの螺旋」がわたしは本当に素晴らしく思っていて、聴くといつも涙腺が緩みます。繊細なアンサンブルと美しい音色によって祝う、命の誕生。生まれてきたことを祝われない命などありません。圧倒的な生命賛歌として君臨する曲であり、僕の中では同テーマでLa’chrima Christiの11分11秒の大曲「Magic Theatre」と比肩する感動の1曲です。

 2020年、ご存じのように世界は未曽有の事態に陥りました。どんな人だって例外ではありません。変わってしまった世界においても、三船さんは“他人がつくった幸せに逃げるな”と歌います。窮屈で生き辛くなっていく時代だからこそ、主体的に生きて君だけの物語、自分にとっての幸せをつかみ取れ、そんなメッセージを込めています。極彩色の祝祭は、そんな多様な人々の連なりによってこそ本当の形を得られるのでしょう。共に生きていくことを鼓舞するこの音楽は、溢れんばかりの希望と光をもたらしています。

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