セルフカヴァーという枠に収まらない BUCK-TICK『殺シノ調ベ』

 1991年までにリリースされた楽曲の中からメンバー自身が選曲し、リアレンジを施したセルフカバー作品。1992年璃々ス。単なるベスト盤に着地しない辺りがBUCK-TICKらしく、5thアルバム『狂った太陽』で大いに花開いた才能を如何なく発揮した一枚となっている。

 どっしりとした重低音とデジタル・サウンド、大胆なアイデアを組み合わさることで新しい輝きを放つ楽曲群。インダストリアルへの傾倒を感じさせる攻撃的で毒気のある#1「ICONOCLASM」から、リアレンジされた初期の大名曲#2「悪の華」の流れがもう痺れるほどのかっこよさで、以降も見事な解体・再構築が続いていく。

 エスニックな曲調を取り入れながら憂いを帯びた世界を表現する#6「Oriental Love Story」、荘厳なクワイアが加わってよりスケールを広げた#8「Jupiter」、洗練されたビートロックでKOする#9「Moon Light」、ミステリアスかつ淫靡な魅力すら振りまく#14「Hyper Love」など。覚醒したバンドの手によると、こうも変貌を遂げるのかと驚かされる曲は多く、原曲以上のクオリティと言えるものも多い。櫻井氏の表現力も段違いで、耽美でダークな音楽性をより高い次元に押し上げている。

 そして、やっぱりBUCK-TICKといえばこの曲と思うほど好きな#12「Just One More Kiss」の収録も嬉しい。あまりにも前衛的なリメイクとなった#5「MAD」は、賛否両論だったにせよ、深化を遂げたBUCK-TICKだからここまで大胆に表現できるのでしょう。洗練と実験精神を両立して高い完成度を誇る本作は、セルフカヴァーという枠に収まらないBUCK-TICKのマスト・アイテムのひとつ。

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