8年間の集積による重音叙事詩 Year of No Light『Consolamentum』

 2001年にフランス・ボルドーで結成されたスラッジメタル/ポストメタル・バンドの2021年7月リリース作品。2013年に発表した『Tocsin』以来、8年ぶりとなる新作です。活動歴は長いけれども、ライヴ盤やサントラのリリースを除くとこれが4枚目のオリジナルアルバム。The Ocean(Collective)、日本のMONOやenvyなど、近年になってこの手のバンドをリリースしまくっているPelagic Recordsより発売。

 彼等もついに20年戦士。ヨーロッパのポストメタル界隈において、スウェーデンのCult Of Luna、ベルギーのAmenraに加え、フランスにYONLありの存在感を放ち続けています。8年という歳月が流れるもラインナップの変更はなく、変わらずの6人編成。2010年作から『Ausserwelt』から継続して歌無し声無しの完全インストゥルメンタル。5曲収録中4曲で10分越え。まさしくというスタイルは、『Tocsin』の流れを汲んだものといえます。

 YONLの特徴と言えば、スラッジメタルやドゥームの要素を含んでいるとはいえ、どちらかと言えばポストロック/シューゲイズを耐荷重オーバーに落とし込んだ形に近いと思っています。Pelicanの初期(1st~3rd辺り)もドラマティックなヘヴィポストロックという印象を持っていますが、YONLはもっと峻厳で哀切と冷気を含んだもの。ツインドラムによる自在の速遅操縦と驚異の推進力、トリプルギターによるドゥームからシューゲイズのエレメントの多層化は、他にはない味となって聴き手を禁断症状に陥れます。

 タイトルの『Consolamentum』は”慰め”という意。 デシベル・マガジンをGoogle翻訳しましたが、“「慰め」という用語は、12世紀から14世紀に南ヨーロッパで栄えたカサリック教会の開始儀式である聖餐式を表しており、この儀式は永遠の厳粛さと聖霊への没頭をもたらしました。”とのことです。

 ダークなアンビエントの装いから、重厚なリフの反復が成す精神窒息業#1「Objuration」で始まる本作。丹念な作業を積み重ね、ゆったりと進行する13分に身ををゆだねる。荘厳な六重奏は#2「Alètheia」において、pg.lostを思わせるドラマティックな展開からポストメタルへとマッスル化していく過程を辿ります。

 『Tocsin』はそれこそ全体的にタフなビルドアップされてましたが、本作は諸要素の密接的な連携、そして展開の妙によっての構成度の高さを伺わせます。一番の起伏に富む#3「Interdit aux Vivants, aux Morts et aux Chiens」は、重軽轟静速遅の職人だからこそのコントロールが冴えわたる。もちろん、衝撃度も高いです。

 特にインパクトが強いのは後半2曲。まずはMVが公開されている#4「Réalgar」。本作の中ではとりわけ静寂の占める割合が多い。ドゥームメタルを基盤に残したうえで、哀切を残すシューゲイズ風ギターが添えられ、終盤はアンビエント・パートへ移行。それはまるで現代における心の空虚さを映し出していくかのようです。バンドは、2013年に『Vampyr』のサントラ、パリのケブランリ美術館で上演したJeanRouchの1955年の短編映画「LesMaîtresFous」のオリジナルスコアを制作していますが、その影響が物濃く出ているのが本曲といえるかもしれません。

 そして、#5「Came」。スラッジメタルの重量で低地帯を埋め、その上を70’sプログレ~映画音楽のような意匠のキーボードが舞う。そのうちにドラムの打音が強烈になり、ギターの残響が物語を締めくくるように垂れ流される・・・と思ったのもつかの間、ブラストビートによる尋常じゃない加速で、劇的な旅路は衝撃の結末を迎えます。タイトルは訳せば”来た”でありますが、その来たは破滅への導きなのか。8年の歳月をかけてきた重音の叙事詩は、バンドの存在感を一層高めるものと言えそうです。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次
閉じる