雪解けをもたらす誠実な歌と音 ROTH BART BARON『ロットバルトバロンの氷河期』

自主でリリースされた2枚のEPがdisk unionやJET SETなどから多大な指示を受け完売。サマソニを始め、多くの注目イベントに出演し、既に熱狂的なファンを獲得し始めている新世代の2人組バンド。遂に完成したデビューアルバムは海外の空気までも時代の感覚として取り込んだ新時代のマスターピース。Fleet Foxes、Bon Iver、Grizzly Bearなどが引き合いに出される。ギター、バンジョー、マンドリン、ピアノ、和太鼓、グロッケン、マリンバ、フィドルなど多種多様な楽器が生み出す壮大なサウンドスケープと美しいメロディは海外からの評価も高い。初々しくも圧倒的世界観を持った一枚。既にNYでのライブや、SNSなどで海外から反響を得ているなど境界線のない活動にも目が離せません。

 2014年にリリースされた9曲入りの1stフルアルバム。再生してすぐの”目を覚ませ、顔を洗って”というフレーズからハッとする。プリミティヴなアコギの音色、三船さんの語りかけるようなファルセット。氷河期というタイトルから、冷たく凍りついた世界、ある種の絶望を誘うものかと思えばそうではありません。世界の片隅から「キミとボク」に届ける誠実な歌と音楽が鳴り響きます。

 これまでの2枚のEPからの地続きであり、インディ・フォークと呼ばれるであろう、アコースティックな音像を主軸に据えています。そこにホーンセクションやキーボードを始め多種多様な楽器の音色も加味され、華やかなハーモニーが生み出される。Fleet FoxesやBon Iverといった名前が引き合いに出されることに納得しつつも、日本語詞で書かれた物語がグッと心のうちに入り込んできます。

 作品の肝である#1「氷河期#1(The Ice Age)」~#2「氷河期#2(Monster)」~#3「氷河期#3(Twenty four eyes / alumite )」という連作がもたらすのは、根源的な歓びと感動です。雪解けを迎えた温かさが包み込む#1でまず昂ぶる。#2は本作で最も好きな曲ですが、特に音の立体的な重なりとハーモニーに惹かれ、壮大な終盤があまりにも見事。#3で歌われる”少しだけ素直に生きるべき、救いなんていらない”という詞はその後の彼等の強いメッセージである”自分らしく生きろ”に繋がっていく。この曲では特に、管楽器が温かく寄り添うように聴き手を鼓舞してくれます。

 一端のピークを迎えた作品は、その後は繊細に爪弾かれる#4「春と灰」の優美さにうっとりとし、#9「オフィーリア」の研ぎ澄まされた静けさの中に溶け込む。なかでも#6「Buffalo(taivaan helmi)」の生命力に満ちた躍動感は、特筆すべきものがあります。

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