リズム隊を失っても SlipKnot『.5: The Gray Chapter』


 ポール・グレイの死去、そしてジョーイ・ジョーディソンの脱退とリズムの両要を失う。それを乗り越えて6年ぶりとなる2014年リリースの5thアルバム。10数年経っているので、いまさらそんな怪物クラスのエネルギーが生まれるわけはないが、もちろん1stや2ndの怒りや衝動はここにはありません。ポールに捧げた#1「XIX」というオリエンタルな色調の楽曲からスタートする本作は、流れとしては3rdや4thを汲んだものであり、多彩な表情を持つメロディアスなヘヴィロックという印象です。

 しかしながら、前作よりも初期衝動の揺り戻しがあるというのは確かに感じるところ。如実に感じるのが#11「Custer」や#13「The Negative One」辺りで、初期を彷彿とさせる激音に見舞われます。スラッシーな展開と重厚なグルーヴ攻めでここまでやってくれるとはと踊オr気。それに#3「AOV」、#4「The Devil In I」にしてもリフやビート、シャウトに強烈な破壊衝動を注ぎながら、美しい歌やメロディへと巧みに切り替えてインパクトを残しています。一撃の殺傷力よりも展開でしっかりと魅せられる辺りも良い。リズムの核は変わっていますが、そこまで違和感を持つものではないと思います。

 そして、いつも通りに騒がれるStone Sour化。本作にしてもクリーンヴォイスを多用して歌い上げることやメロディが引き立つ場面が多いから致し方なし。今の彼等はどうしたって、SlipknotとStone Sourが交錯したものになるでしょう。#5「Killpop」は確かにStone Sourっぽい楽曲。ただ、#8「Requiem」に関しては陰鬱な緊迫感と重音が被さってくる歌もので、スリップノットらしい感じ。彷徨える感情を吐露したようなミドルチューンで鬱蒼と重厚に本作を締めくくる#14「If Rain Is What You Want」もそうでしょう。大所帯が分厚いサウンドを奏でているのは関係しているが、意図して変化をつけています。

 「リズムの要を失ったけれども思ったよりも本作は悪くない。けれども、スリップノットに求めているものとは違う」みたいな意見はやっぱり多くなりそうな気がします。個人的には、本作は前作よりは気に入りましたし、予想以上の作品には仕上がっていると思います。まあ、もちろん初期派ですけどね。

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