
浅野いにおさんの原作マンガは未読。でも、漫画を読んでいる人の感想を見ていくと”小梅過ぎる”、”マジ磯部”という言葉が多く見られるので、キャスティングとしては成功なのでしょう。原作の雰囲気にとにかく忠実でこだわろうという気持ちは伺えます。劇伴を担当したのがworld’s end girlfriend。音楽がwegだから観に行ったというのが一番大きな理由。『空気人形』の時もそうでしたが、メルヘンチックに作品を彩っていました。
端的に言えば、「中学生の性春映画」。全然爽やかじゃないし、キラキラしてません。ありきたりなラヴストーリーじゃないし、青春映画でもない。最終的にロマンティックいらねえよって感じでC-C-Bを全否定。付き合うとかいろんな順序とかすっ飛ばして、興味本位で小梅と磯部は体の関係を結ぶわけですから。
丸腰の心と身体がぶつかっているわけではなく、心の内は明かさないまま体を繋げて埋めようとする。でもお互いの闇の部分は解決することは無い。体も心も擦り減り、逆に空虚な自分が浮かび上がる。観ていて苦しさを覚えるのはこういうところでしょうか。ちなみに“うみべの女の子”は小梅を指してるわけではありません。

中学時代の異性への憧れ、大人への憧れ、恋と性、生々しく描いてます。言語化できない感情のモヤモヤはあちこちに飛んでいく。その中で勉強に励んだりする人、部活に打ち込む人、ひとりで物静かに過ごす者、友人とガヤガヤと楽しい時間を送る者。それぞれいる。でも心のどこかで異性と付き合いたい、関係を持ちたいは絶対にある。
周りと仲良くやんなきゃと思う一方で、自分だけ背伸びしようとか出し抜こうという気持ちもあるでしょう。思春期は、いろいろと複雑です。承認欲求を満たすツールが増えた現在は余計に大変。ちなみにわたしは、本作でいうと、まえだまえだの弟のように部活に打ち込んでました(バスケ部です)。
『猿楽町で会いましょう』でもハードなシーンを演じてた石川瑠華さん。猿楽町の延長上というか、本作でも他者依存体質の女の子を演じています。撮影時:23歳にしてちゃんと中学生に見えるのは、彼女の武器でしょう。困った表情が凄くいい。
対しての磯部役の青木くんは死んだ目がずっと続く。何事も斜に構えて、ずっと中二病。わかりやすく”てめーらとは違う”感出してる。そんな彼がある出来事でパッとかわっていく。髪を切って、表情も柔らかく、初めて未来を語るようになる。小梅はその変化の影響元が自分じゃないことが辛い。心が死ぬぐらいに辛い。
『君が世界のはじまり』や『街の上で』でインパクトを残した中田青渚さんは、メガネ姿とはいえ、中学生には見えませんでした(笑)。あの喋りと距離感の良さが、身近な存在として引き立ってますが、彼女の場合は関西弁がある役の方が活きる気がします。とはいえ、親友キャラという抜群のポジショニングは確立。主演もいずれ務めそうですが。
そもそも青春って美しいものなんでしょうか、というのが一番のメッセージに思えた。切なくて儚くて痛々しいもの。メインとなる海辺が、ゴミばかりが散乱していて汚いのは、その思春期の心を反映しているのかなという気がしました。