【アルバム紹介】Lights Out Asia、壮麗なる音のヴェール

 アメリカ・ミルウォーキー在住のMike YstadとChris Schaferによるユニット。エレクトロニカ、シューゲイザーの要素を見事に両立したエレクトロニカ・シューゲイザーと謳われた。2ndアルバム『Tanks and Recognizers』を残響レコードからリリースしています。本記事は2ndアルバム~4thアルバムの3作品について書いています。

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Tanks and Recognizers(2007)

 2ndアルバム。彼等のサウンドはニューウェイブを現代的に再編成したエレクトロニカ、シューゲイザーの要素を見事に両立し、残響レコードの紹介では「エレクトロニカ・シューゲイザー」と謳われています。確かに聴いていれば、どこまでも深みにはまってしまいそうな白銀の世界が広がる。荘厳なストリングスが生み出す叙情感、電子音が立体感のあるハーモニーを奏で、均整の取れたサウンドに不思議な陰影を加える霞がかったヴォーカル。周りの空間が真っ白な魔法をかけたように幻想的世界へと変わっていく。まるでシルクのカーテンが優しく聴き手を覆うように。綺羅星の如き力強い光を放つ楽曲の数々。なかでもラストの#9「Spiti Elefas」は約10分間繰り広げられる名曲です。時計の短針が進むにつれて、濃密な音の粒子が大地を憧憬の白で包み込んでいく見事な作品だ。

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Eyes Like Brontide(2008)

 3rdフルアルバム。本作でもその基本路線は変わらないエレクトロニカ・シューゲイザー。優しく流れるサンプリングノイズ、トレモロの美麗な旋律、シューゲイズ寄りのフィードバック、滑らかなピアノ、光り輝くシンセの煌き、緩やかなブレイクビーツ等々がゆっくりと調和しながら流麗で立体的なハーモニーを奏で、感傷と昂揚を掻き立てる音響空間を創生する。どことなく落ち着いたトーンや翳りが表されているのが前作との違いだと思うが、それすらもこの柔らかな音の中にまどろんで溶けていく。ジャケットの通りに夜空を神々しく彩るオーロラに見惚れ、美麗な音響空間に聴き惚れる。インスト主体の中で風景に溶けるような霞がかった歌声で陰陽のアクセントをつけているのが見事。

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In The Days Of Jupiter(2010)

    4thフルアルバム。本作は以前と比べてだいぶ抑性された作風。ドリーミーで浮遊感のあるサウンドはお馴染みであれど、アンビエント寄りの作品と感じます。淡々としたビートの上を宝石のように輝く電子音を散りばめ、エモーショナルなギターが時々顔を出し、まろやかな歌声が乗るその手法は健在であるが、静かに儚い幻想の天地を描いている。ゆるやかに眩惑する音楽への変貌、そこからはアンビエントロニカ、ポストクラシカルといったジャンルがまで頭に浮かぶほど新境地へ踏み込んでいるといえるはずです。期待してたほど上下動はあまり多くなく、薄靄のように広がるギターのレイヤーと厳かな鍵盤の調べ、淡いエレクトロニクスが主導権を握る。無垢に感傷を掻き立てる純白のエレクトニカゲイザーから、木星を巡るアンビエント宇宙紀行となった本作にはまた新たな可能性が見える。

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