
作品紹介
Across the Abyss of Unseen Realms, To the Edge of Eternity(2026)

boneville occident、Of decay and sublimeとこれまでに名称/形態を変えてきたukita氏主導によるプロジェクトの最新形がFrom/infinityです。2020年末から始動し、2022年に2曲入りEP『Sermon: I-II』をリリースしている。
前提条件を先に伝えておきますと、boneville occidentから私は聴いています(最初が2013年秋に開催されたカナダのポストハードコア・バンド、Milnakuの来日ツアー大阪編)。そしてboneville、Of decay and sublimeの両方とも音源ならびに複数回のライヴを体感している。
bonevilleは轟音系ポストロックとブレイクビーツを交えたスタイルが主体で、GY!BEやSquarepusher、65daysofstatic辺りが重なるような音楽でした。その後継で2016年から始動したOf decay and sublimeは、よりオーケストラルな要素を強め、なおかつ白/光の要素が強まったインストゥルメンタル・ポストロックを鳴らしていました。共に1曲ずつ推薦しておくとboneville occidentは「correia」、Of decay and sublimeは「Psalm」を挙げたい。ただ、2曲ともに10分ある曲ですけどね。

こうした流れを踏まえ、From/infinityの1stアルバム『Across the Abyss~』の話に移ります。本作は全6曲52分収録。リリースは当サイトではおなじみのTokyo Jupiter Recordsからです。ミックスをTim De Gieter(ex-Amenra)、マスタリングをMagnus Lindberg(Cult of Luna)が担当。曲名には「Lamentation」がすべて冠され「Lamentation Ⅰ」~「Lamentation Ⅵ」までが順番に並びます。ちなみに”Lamentation”は悲嘆や哀悼を意味する。補足するとukita氏がフルアルバムという形態で発表するのはキャリアを通じて初となります。
From/infinityは、Of decay and sublimeと正反対に真っ黒。光という温情はほとんどない。用法・容量を守らない重低音のフルコースであり、築年数の古い家屋だと耐えられるかが心配になるぐらいです。LentoやAmenraが近しく思える存在で、スラッジ寄りのポストメタルが聴き手を制圧しにかかる。1曲は平均すると7分を超える長めの尺。そして基本的にはインストゥルメンタル。ですが、本作では半数にあたる3曲がヴォーカル入り。#1と#4にNiiK氏(Pale)、#5をりょたぽん氏(雲雀-Hibari-、Arbus、From/infinityのサポートドラム)が担当しています。
#1「Lamentation Ⅰ」から始まる過酷な巡礼。痛みと祈りと重苦しさを兼ね備えたAmenraのリフを”アメン・リフ”と知人が過去にもじって表現していましたが、同曲にはその影響が色濃く表れています。静と動の間を揺れ動く音の群れ。そこに乗るNiiK氏の叫びやクリーンヴォイスが悲痛さに拍車をかける。そして、終盤にはコーラスのアレンジも加わり、暗黒の中で神聖さすら感じさせる結末へと向かっていく。
続く#2「Lamentation Ⅱ」はそれこそLentoの門下生かと思しき薙ぎ倒し系リフを中心に展開。隙間を絶対に許さないマンと表現できるほど空間の至るところを音で密閉する。本作から最初に公開された曲であることを考えても、名刺代わりとなる1曲でしょう。
#3「Lamentation Ⅲ」や#4「Lamentation Ⅳ」辺りではブラッケンド・ハードコア/ブラックゲイズの部分実装によって、速度超過によるスリルがもたらされる。NiiK氏の助太刀が再び入る#4は、ノイズ・パートがない漆黒版のPaleと表現できるかもしれません(補足しておくと、Paleのギタリストであるワタナベ氏もFrom/infinityのサポート・ギターとして一時期参加していた)。
逆に鈍重たる#5「Lamentation Ⅴ」はスラッジ色が濃くなり、2人目のヴォーカル参加者・りょたぽん氏のがなり系の叫びと語りが加わる。雰囲気でいえば、もう一度Amenraの世界に入信してしまったかのような楽曲です。そして、最後を飾る#6「Lamentation 6」は15分45秒にも及ぶ。これまでの楽曲とは違い、暗さへの反対運動となるメロウなフレーズが差し込まれますが、オセロみたいに白へひっくり返ることはない。時間をかけた黒く重いおもてなしが続く。
忍耐を強いる、どでかい音の全身浴。アンプの要塞を通し、忘れることのできないその体験をFrom/infinityは提供している。

