
2008年からドイツを拠点に活動するインストゥルメンタル・バンド。Dunk!Recordsに所属しており、いわゆる轟音系と呼ばれるような静と動のダイナミクスを持ち味とした音楽を奏でます。バンド名のKokomoは、アメリカの小説家であるJoey Goebelの著作から採られている(参照:Tough Magazineのインタビュー)。とてもマイナーなバンドではありますが、2015年10月に来日ツアー4公演(東京2公演に山梨、京都)を行っている。
本記事は2026年5月にリリースされた7年ぶりの6thアルバム『Whip』について書いています。
作品紹介
Whip(2026)

6thアルバム。全6曲約38分収録。Dunk!Recordsからのリリース。フルアルバムの発売は約7年ぶり。過去作はいくつか聴いているのですが、kokomoはポストロックというよりは、ポストメタル寄りのインストではあります。
トリプルギター編成で光を遮るようなディストーションと分厚い壁を築くトレモロを軸にし、叫ぶというよりは遠吠えに近いヴォーカルが数曲で入る。それこそ本作においては、6曲中5曲に声が入っているのでインスト・バンドというこれまでから逸脱しております。例えるならYear of No Lightが激情系ハードコアと結びついた感じの音楽というのが近い。
おそらくハンガリー映画の『ニーチェの馬(ハンガリー語で”A torinói ló”と記載、英語だとThe Turin Horse)』からタイトルを採っているだろう#1「A Torinói Ló」から鳴り続ける重く険しい音。張り詰めた緊張感は演奏に反映され、終盤では発達しきった轟音にどん底からの叫びが被さっていく。MV公開の先行曲として選ばれたのも納得できる本作を象徴する楽曲です。
その後も人生は厳しいぞと突きつけるキャンペーンでもしているかのような暗く重い楽曲が続いていく。#2「1758 Times of Weird Sadness」にてブラストビートが激しさと絶望感の広がりに勢いを持たせ、#5「The Lonesome Foghorn Blows」ではYear of No Lightに近い悲壮と重量を感じさせる。
一方で#3「Thigh Kick Knockout Fake」にてkokomoのかつての穏やかな表情が少しもたらされ、#4「5am」では男女ヴォーカルの対比と共鳴がアクセントとして機能しています。しかしながら、以前のポストロック的なニュアンスは薄く、全体を通した色味のなさはシビアな現代とリンクしているのかと思えたり。希望を軽々しくラッピングせず、出口のない殺風景をひたすら進んでいるような感覚がある。
ラストを飾る#6「Trümmer Deluxe」は唯一ヴォーカルが入っていない約8分の曲で本作最長。ゲスト参加2名によるキーボードやヴァイオリンが加味され、静寂が訪れる時間帯もあります。それがコントラストの大胆さに拍車をかけており、クライマックスでは巨大な混沌としたうねりとなって表れる。終いにはヴァイオリンの旋律が悲しく別れを告げる。
本作においてKokomoは寄り添うことはほとんどしていない。声をこれまでよりも多く引き連れて、精神にずっしりとくる作品を生み出している。
