1992年~2002年まで活動をつづけた北海道・札幌のオルタナティヴ・ロック~エモ・バンド。bloodthirsty butchersやeastern youthと共に、北国からその存在を全国に知らしめました。
Vo&Gtの竹林現動、B&Voの小森 望を中心に結成し、主に4人組として活動。FUGAZIや Drive Like Jehuといったソリッドなポストハードコアからの影響を感じさせ、切れのあるツインギターとスピード感、それに日本人としての情緒と歌が合わさります。
彼等は98年に1stアルバム『Lost Days』、00年に2ndアルバム『揺ラシツヅケル』と2枚の傑作を発表。本記事ではその2枚について書いています。
アルバム紹介
Lost Days(1998)
北海道のオルタナティヴ/ポストハードコア/エモの雄、Cowpersの1stフルアルバム。 bloodthirsty butchers と並んで北海道から全国へとその名を知らしめた存在です。
紫電一閃の#1「Lost」から走る凄まじい衝撃。ソリッドで鋭いギターリフ、変拍子を用いた展開、荒削りながらも感情のこもった咆哮にここまで熱くさせられるとは・・・。
音楽的には、FUGAZI、Pitchfork、Drive Like Jehuなどの90年代ポストハードコアの先鋭からの影響を強く感じます。シューゲイザーから波及したであろう轟音ギターも登場。全曲で英詞を用い、とめどない激情と哀愁を放つサウンドが生み出されています。
象徴的なのは#4「CurveⅡ」。掻き鳴らす轟音とメロディの上にエモーショナルな歌が乗り、COWPERSの中で屈指の名曲。そこから、やけっぱちの暴走を見せる#5「Crawlspace」に繋がるのは不思議だけれども。
他にも本作は佳曲揃い。ツインギターの変則的な絡みと優美なベースライン、それに掛け合いのヴォーカルが印象的な#2「Junk」、90’sエモ的なサウンドと浮遊感あるイチマキさん(BP.)の歌声との融和が見事になされた#6「Out of Punch」、ブッチャーズの吉村さんが参加した#8「Days」、尋常じゃない熱量を持って北の荒野を突っ走るラストトラック#12「Rust」など名作と謳われるだけある充実ぶり。
全編に渡り、ハードコアの芯を感じさせるストイックさと熱量がまた良い。聴き終わった後も心の中で鳴り響き続ける力強い音。北海道の猛者達ここにありを印象付ける傑作1stアルバムです。
揺ラシツヅケル(2000)
約2年半ぶりとなる2ndフルアルバムにして、オリジナル・ラスト作品。Rocket from the CryptのJohn “Speedo” Reisがプロデュースを務めています。
大きな変化として本作では全編日本語詞を採用。bloodthirsty butchersやeastern youthといった同郷のバンドの影響もあるだろうし、現状を打破すべく自身で変化を望んだ決断だったのかもしれません。
日本語の語感を研ぎ澄ませたエモーショナル・ロックは、これまでに無い鋭い切れ味と深い哀愁を含有。サンディエゴ系列のポストハードコアから、和の風情/情緒が加味されることで発展を遂げています。
Cowpers史上最強の1曲といえそうな#1「玻璃」から早くも最高潮のテンションへ。複雑に絡み合う鋭いツインギターは扇情的に響き、包容力さえ感じさせるようになった感情的なヴォーカルが胸を打ちます。
前作『Lost Days』で聴かせた北国版ポストハードコアの攻撃性/変則静には随分とやられましたが、日本語詞を中心に据えた聴こえ方の違い、荒削りだったメロディの研磨が確実に良い方向へ導いています。
うねるベースラインとドラムに支えられながら、カオティックな絶叫とナイーヴな歌唱が交互に顔を出す#2「ヤガテソコニ至ル」、仲間と肩を組んで夕陽に向かって走っていくような#5「斜陽」、プログレッシヴな展開を基に繊細なフレーズから豪快な爆音まで鳴らしてみせる#8「揺」と収録曲はいずれも強力。体の芯から熱くなる曲ばかり。
蒼く鮮烈な疾走曲#9「錯覚ノ海」~変則的な構成でありながらも穏やかな昂揚感に包まれる#10「錆色ノ月」というラストの流れも秀逸。本作を持ってバンドは惜しくも解散しました。
それでも2枚のフルアルバムは、いずれも名盤として君臨しています。未だにマニアックな域を出ないのは事実ですが、彼等の活躍は確かな爪痕を残しています。だってあの向井秀徳が2002年11月30日のNUMBER GIRL解散ライヴでCOWPERSの名前を挙げてるぐらいですから。