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Start Here(2002)
Mineral解散後にヴォーカルのChris SimpsonとベーシストのJeremy Gomezを中心に結成された新バンドの1stアルバム。
これまた大胆な深化です。クリスのあのナイーヴな歌声は健在であるにせよ、冒頭の#1「Start Here」から電子音が大々的にフィーチャされていて、初めて聴いた時は驚きの方が大きかったもの。Mineralの傑作2nd『Endserenading』の向こう側に咲いた音楽は、電子音と積極的な融和が図られ、レディオヘッド的な感性をも落としこんでいます。
儚く繊細。でも、麗しく優雅でもある。バンド・サウンドをあえて後退させ、エレクトリックな要素を打ち出すことで、虹のようなメロディが降り注ぐ。もはやエモというよりは、ポストロックといった音像の方が近いですね。Mineralの諸要素を残しつつも大胆なまでの再編成が成されている。
まるで光輝く海にでもいるような#2「Good Morning, Providence」、鍵盤の音色を中心にエレガントな美しさで彩っていく#3「Cinema Air」、シガー・ロスの領域へと踏み込んだ印象さえ受ける荘厳な#5「Ascension Dream」といった楽曲を中核に据え、さらにはアコースティックな曲調と電子音の組み合わせで穏やかな空気で満たしていく#7「My Funeral Party」、大らかなクライマックスに身を包まれる#10「Ambulance」等も揃えた全10曲。
どの曲もドラマティックな起伏があり、作品全体の流れも申し分なく、聴いていると色鮮やかな風景が一面に広がっていく事でしょう。残響すらも美しいMineralの先の世界。