イギリスのロンドン出身のミュージシャン、ウィリアム・ビヴァン (William Bevan) のソロプロジェクト。ダブステップを代表するアーティストのひとり。
本記事ではフルアルバム2枚について書いています。
Burial(2006)
1stアルバム。すでに“ダブ・ステップといえばBurial”というほどの知名度を誇ります。
マッシヴ・アタックの進化系とも評価されましたが、深い陰影に富んだディープ・ダブは極めて内省的で暗い。抑圧されたダンス・ミュージックといえそうだが、MOODYMANNにも通じそうな黒さが渦巻いています。地を這う重たいベースとキックの音を中心とした鈍色のインストが主体。そこに浮かんでは消える幽玄なヴォーカルや緊迫感を煽る信号音のサンプリングを絡ませることで、虚無の煙たい薫りや空間的な奥行きを拡げている。
実際にダブステップはドラムンベース/2ステップにダブが掛け合わさったことに起因するそうですが、ミニマルやトリップホップなどの影響も濃く滲ませている印象。そして、UKブリストルの暗さや内省も内包しながら無機質でストイックなフロア音楽として深遠に鳴り響く。
知的でクール、だがどっぷりと沈んでいくような重たいグルーヴを有しており、聴けば聴くほどに深みにはまっていってしまう。個人的には特に#4と#12が潜在意識すら憂鬱で塗らすほどのディープな空気と重たさがあります。本作は全世界にダブステップを知らしめた脅威の一枚。
Untrue(2007)
前作から1年というハイペースでリリースされた2ndアルバム。リリースは前作に続いてKode 9によるHypter Dubから。
灰色の雨がじっとりと体を濡らすような感触は相変わらずで、重たいベースラインに暗く深い音処理を緻密に施したダブステップが主体とです。今回はBPMがより速めで、前作以上にソウルフルなヴォーカルをフィーチャしたことでダークなR&Bとしての機能性が高い。メロディアスになったことででかなり取っ付きやすくなっています。
冒頭の#2「Archangel」や#3「Near Dark」からクールに刻まれる重いベース/キックにゆらめくヴォーカルが入っていく事で、コンクリートのような重みと物憂げなサウンドスケープを形成。時にはアンビエントなエレクトロニカ風味の曲を挟みながら、ひたすら孤独と戦いながら闇を小気味良く疾走していきます。
”真夜中のサウンドトラック”という言い得て妙な形容も納得、そんな冷やかな緊迫感とリリカルな美しさを内包しながら鳴らされるフロア・ミュージック。Buralは本作でまた、ダブステップの地位を全世界で押し上げました。