天上の音楽がここに響きわたる。アイスランドの至宝Sigur Ros、去年のサマーソニック以来の来日公演である。単独としては2008年以来となるそうですが、自分はシガー・ロスを見るのは初めて。2010年の暮れにヨンシーのソロ公演は見てますが、遅まきながらようやく本隊を初体験です。
しかし、彼等の人気ときたら凄い。平日のZEPP NAGOYAで1階も2階もここまで埋まるとは。自分は、2階で見ていたのだが、老若男女問わず、色んな方々が楽しみに見に来ているのが目についた。改めて、シガーロスの成し遂げてきたことの凄さを思い知らされます。
ライヴは、意外にもほぼオンタイムでスタート。薄い白のカーテンのような幕の向こうで順番に姿を現していくこと、11名。事前に噂をされていた通りの大所帯の編成。そして、始まったのは・・・あれ、聴いたことない(苦笑)と思ったら、6月に発売される新作『Kveikur』からの「Yfirbord」でした。異国から零れてくるようなヨンシーのファルセット・ヴォイスと緊張感のあるサウンドが、静かに郷愁を運んでくる。
続けての「Ny Vatteri」では、その儚く美しい音世界に身も心も連れて入れてしまった。思ったよりも滑らかで太いベースライン、そして屋台骨をがっちりと支えるドラムを下地に、ボウイング奏法を中核に据えたギターが幻想的な佇まいを深めていく。さらには、鍵盤やストリングス、トランペットにグロッケン、パーカッションまでもがその深くて立体的な音像に情感を染み込ませる。
練られた照明や映像もまた素晴らしく、ステージからは片時も目が離せない。とはいえ目を閉じて聴きたくなるぐらいに、その音の集合体は魅力的であるのですが。心地よい鍵盤の反復から壮美に彩られていく「Sæglópur」、終盤の美しい音の連続に心を揺さぶられて仕方がなかった「Varúð」、それに華やかなアンサンブルに魅了された「Olsen Olsen」とも豪華と形容できるほどの名曲を据えたセットは、鳥肌もの。この包容力と優しさは格別である。
新作からも4曲を披露。これまでとは違う趣を持った作品になるのではないかと予感させる曲調のものが多かったです。GY!BEのようなダークな部分が表れており、本編最後を飾った「Brennisteinn」にしてもSwansのような厳かな音色が険しい風景を突き進んでいくかのよう。新作における覚悟のようなものを感じられた。今回のセットリストの中で目立つほどに異色だったので、これは賛否両論の作品になるんじゃないでしょうか。
アンコールでは、個人的に大好きなアルバム『Takk…』からの「Glósóli」を穏やかに聴かせ、10分近くに及んだ「Popplagið」で壮絶なるクライマックスを演出してみせた。天上の音楽、そう評されるのも納得できるほどに、世界が違った。会場から消えることの無い大きな拍手と歓声。それに応えてもう一度ステージに姿を表した11人は肩を組んでお辞儀をし、観客と共に名古屋公演の感動と興奮を共有していたのも感動的でした。
—set list—
01. Yfirborð
02. Ný Batterí
03. Vaka
04. Hrafntinna
05. Sæglópur
06. Svefn-g-englar
07. Varúð
08. Hoppípolla
09. Með Blóðnasir
10. Olsen Olsen
11. Kveikur
12. Festival
13. Brennisteinn
14. Glósóli
15. Popplagið