自らの音楽を”ドリーム・ポップ・ワールド”と称するニューヨーク出身のネオ・シューゲイザーデュオ。日本人女性Vo.ユキ・チクダテを中心としたそのサウンドは確かに我々の琴線に触れるものとなっています。ちなみにバンド名は日本語の「セックス遊び」に由来。本記事は3rd、4thアルバムについて書いています。
Hush(2009)
3rdアルバム。一言で作品のイメージを表すとするなら、”パウダースノウ” 。Vo.ユキの澄んだ声も、ギターもシンセもみながみな、透明感のある音を奏でています。その真っ白い幻想のベールを纏ったサウンドスケープは心地が良い。時折、分厚いノイズをぶつけきたり、ドラムが少しやかましくなったりとシューゲイザーらしい轟音が顔を出す場面もあります。、ですが、表面上はあくまでやわらかくてポップな手触り。見事なまでにキャッチーな要素が勝っていて、聴きやすい仕上がりになっている。そこかしこに散らばめた和の要素もうまく調和させ、なおかつミステリアスなキュートさや日本語を交えたユニークな語感も耳を刺激。どことなくほんわかした感じを与えているのも夢に浸っているようでなんだかクセになります。その中でも疾走感と音の渦巻きが異彩を放つ#11「Me & Mary」がお気に入り。頭を麻痺させるような中毒性やサイケデリックな感覚は希薄ですが、ドリーム・ポップ・ワールドと称すこの世界は不思議な魅力に溢れています。
Fluorescence(2011)
4thフルアルバム。プロデュースにPASSION PIT等を手掛けるChris Zane、アートワークは4ADのカタログでお馴染みのVaughan Oliverが担当。可愛らしいシューゲ/ドリームポップという装いはそのままだが、メロディはより可憐で浮遊感も増大。特徴的なのはニューウェイヴに影響を受けたというシンセの増加。もちろん優しい音色から豪快に歪んだ空間を築き上げるギターの仕事ぶりやパワフルに屋台骨を支えるリズムも強み。ユキ・チクダテにしても繊細でキュートな歌声で曲の輪郭をしっかりと整えつつ、本作では伸びやかなファルセットを高らかに響かせています。さらには4ADのような耽美性までも集約、自分達の音像を膨らませている事に成功している。ブロンドレッドヘッドを思わせる#2、可愛らしいかと思えば激しいアンサンブルをも堪能させてくれる#3、本作最長の7分近い時間をつかって甘くも力強いファンタジーを表現する#6、彼女らしい浮遊感に心躍る#7まで佳曲は多い。一層映えるメランコリアとポップ感、自らを総括しながら実に正しい前進を見せた一枚だと思います。