カナダ・トロント出身のエレクトロニカ・バンド。2004年結成。人力のグルーヴと電子音響を組み合わせたサウンドで人気を得る。2009年にはフジロックで圧巻のパフォーマンスを披露。現在までに5枚のフルアルバムをリリースしています。
本記事は2ndアルバム『LP』、3rdアルバム『Latin』について書いています。
LP(2007)
2ndフルアルバム。NEU!のトリビュートにも参加してますが、日本で本格的に名を広めたのは09年のフジロック参戦。わたしはそのステージを拝見しましたが、09年のフジロックでも上位にランクインする内容でした。
そんな彼等はベース、ドラムによる強靭なグルーヴの上をシンセが麗しくも彩りをつけるというスタイルが肝。非常にダイナミックなサウンドフォルムで躍動感がすごい。なおかつフロア寄りの電子音のゆらめきが効果的に働く。やってることはクールでミニマルなんですが、快楽的な連動があります。
マスロックに近似した変幻自在の展開でストイックに音を締め上げれば、4つ打ちで心地よく三半規管を揺らしたり、Owen Palletがストリングスをアレンジしたという#4「Lovely Allen」みたいに流麗なシンセの波に耽溺するような曲まで操る。ライヴではその場で声を加工したりもしていたので、ユニークな音響処理も特徴。
エレクトロニカの繊細な優美性とマスロックの精微な構築の妙が見事に融合。バトルスや!!!辺りを思わせる音像で、特に#1「Super Inuit」が最高に心地よく踊れる。
Latin(2010)
3rdフルアルバム。序盤を聴いているとエレクトロ寄りの構築が成されていると感じますし、エフェクティヴなシンセやキーボードが温かみと幻想性を伴って響いてきます。ですが、後半に進めば進むほどリズム面が強調されたトラックも出てくる。
前作を順当にアップデートした1枚という印象はあります。人力の演奏がもたらすグルーヴ、煌くエレクトロリックな色合いがより明確な力強さと艶やかさを加えます。時にノイジーで鋭角的、時にプリミティブかつ美しく。どういった表情を曲に持たせても一定水準の精度を誇る。
ミニマリズムの快楽性も追求されているし、目まぐるしい展開の妙技も澄まされ、ロボットヴォイスも絶妙なアクセントとして機能。スムーズに心地よく、ダイナミックに聴かせてしまうアプローチは変わらず良心。
特に幻想的な世界観の演出と独特の浮遊感が逸脱な#5、意識の奥まで掠め取るグルーヴィな演奏が光る#7、過去作の中でも極めて心地よいダンスチューンに仕上がった#9などがよろしい。様々な素材を組み合わせながら、独自の宇宙を創造する手腕はまだまだ底知れなません。