【アルバム紹介】Fragment.、神々しいヘヴィネスと清涼感

 2006年にスタートした、フランスのThierry Arnalによるソロ・プロジェクト。JesuやNadja辺りを彷彿とさせるドローン・シューゲイザーを志向。ベルギーのConSouling Soundsレーベルを中心に、正式リリース、自主製作を問わず、10作品前後リリースしているようです。

 本記事は2作品について書いています。

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アルバム紹介

is your truth carved in the sand?(2009)

    選りすぐった8曲を集めて勝負をかけた日本デビューとなる編集盤。リリースはGod Is An Astronautや今年Nadjaまで発売してしまったHappy Princeから。

 ”JESUを彷彿させる神々しさ、ALCENTを想起させる清涼感、NADJAに匹敵するエモーショナルな楽曲性・・・。” というキャッチコピーが物語り、シューゲイザー + ドローンメタル + アンビエントな音楽性を志向しています。

 重たくうねるベースラインと硬質なドラムによるゆったりとしたリズムの上を、重厚なディストーションギターと静かに囁き続けるヴォーカルが密度を高める。そこに眩い光の破片が降り注いで重たい雰囲気の中に圧倒的な浮遊感を漂わせています。

 冒頭の#1、#2からバンドの特徴が大いに現されており、打ち立てる巨大な轟音壁と儚げな叙情が崇高な世界を浮かび上がらせる。その強度の高いヘヴィネスと柔・豪のバランス感覚に明暗のコントラスト、それに展開に頼らず曲の壮大なスケール感と神々しさで聴き手を圧倒してしまう様はJESUを髣髴とさせます。

 印象としては”JESU 65% + Nadja 35%” ってところ。二者のいいところが巧く組み合わさっていますね。とはいえ、ヘヴィな部分でも二者ほど重すぎず、全体としてもメランコリックな叙情味と幻想的な光で包まれています。

 だからこそ「希望」とか「救い」という言葉がより強く脳裏を掠める。後半の曲ではシガーロスの神聖さも伺わせ、白昼夢にまどろむような展開から神々しい光に包まれるような感覚まで、ジャンルを越えて支持される説得力を持ちます。

 8曲で69分(最低6分台で、10分超が2曲)と敷居は高いが、じっくりと向き合えば新たな発見があるはず。

メインアーティスト:fragment.
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Bittersweet(split)(2010)

 UKバーミンガムの有力な実験音楽家であるirohaとのスプリット盤。共に2曲ずつを提供し、共作のタイトルトラックとリミックス音源を含む全6曲44分が仕様になる。

 畏怖すら覚える神々しいオーラと美麗かつ重厚なサウンドウォール、そして輪郭がぼやけたかのようにまどろむ歌声。Fragment.はJesuなのですが、IrohaもほぼJesuです、どうしようもなくJesuです(笑)。

 音楽性に差異はほとんどないぐらいに。ホント、両者ともに共通項は多いのだが、Iroha(#1,#2)の方がキーボードやプログラミングを多用して、重厚でありながらも優しく光り輝くような世界を奏でています。

 機械生成の音を多用しながらもひと肌の温もりの感じられるサウンドを抽出して、大らかに包み込んでいく。冬から春への移行期、雪解けの瞬間が訪れた感じがirohaの音楽から感じられます。

 一方、Fragment.(#4,#5)は前回述べたように”JESU 65% + Nadja 35%”というのは本作でも変わりませんが、こうして比較対象を持って聴くと地を揺らす激震のリズムと壮大なスケール観を伴ったサウンドが意外なほど強烈。

 人力とプログラミングによる深い陰影や言い知れぬ緊迫感を持って迫る音の塊には、有無を言わさぬ説得力も備わっています。シューゲイズ~ドローン~パワー・アンビエントを循環しながら打ち立てる轟音の壁に茫然と立ち尽くしてしまう。

 コラボ作の#3は、壮大で哀愁漂う曲に仕上がっているが、各々のソロ曲の方が楽しめたと思えるのが正直なところ。

メインアーティスト:Iroha, Fragment.
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