2002年に大阪で結成された3人組バンド。オリジナル・メンバーであるSuguru氏を核にメンバー・チェンジや楽器編成の変更を繰り返しながらも20年を超えて活動継続中。
2007年にEP『朽ちていく中で』、2013年にEP『崇高な手』をリリース。また2017年には後のリリース・ツアーで共闘したThis Gift Is A Curseとスプリット作を発表しています。
2023年6月に1stフルアルバム『故郷で死ぬ男』をリリース。本記事では同作について書いています。
アルバム紹介
故郷で死ぬ男(2023)
ヘヴィネスで仁義を通してきたバンドの20年越しの1stフルアルバム。全8曲約51分収録。私は過去音源を追えてませんが、2023年5月にライヴを初めて体感しました。
3LAさんの過去2本のインタビュー(2013、2017)を参照すると、Neurosisがメンバー共通認識。スラッジメタル~ポストメタル~ブラッケンド・ハードコアと通過して己の音楽を追求してきた感じでしょうか。
しかし、SeeKの編成は以前と変わっていて本作ではヴォーカル、ギター、ドラムによる3人体制。音楽的に近しいと感じたのはHexisであり、ギターリフが構築する耳を圧し潰すノイズの壁とドラム主導による肉弾戦上等の加速劇が相まみえます。
1曲の中で速遅を使い分け、精神的な負荷と身体的な打撃性の両方をトガらせる。頭のてっぺんから重力10倍で地面に押し付けられる感覚が続いたかと思えば、拳を交えた血と汗の抗争が何度も繰り広げられます。
始まりの#1「名日」からスラッジ~ブラッケンドの残忍な混合物として7分間にわたって吐き出され、#3「黒い雨」ではポスト系音楽の序盤から激しく重いサウンドへ移行して言葉と暴力の雨を降らせる。さらに#5「異教徒」では死なばもろともな特攻をかけています。
この手のバンドらしい”黒さと重さ”は十二分。鎮静化を試みる旋律もはさんでいますが、雰囲気もので終わることは決してありません。
核であるヴォーカルのsuguru氏が日本語詞を熱く咆哮し続けていて、バンドの闘争本能はむき出し。あくまでフィジカルな姿勢は崩さないのが特徴です。
だからか禍々しさといった言葉よりも目立つのは人間臭さ。ラストを飾る表題曲#8「故郷で死ぬ男」には任侠映画で使われていそうな風格が漂う。孤独な男の哀感と決死の残忍性が実を結び、”故郷で優艶に死ぬ”と荒ぶり叫ぶ。
世界や時代性を追うのではなく20年以上かけて研ぎ続けたヘヴィネス、そして辿りついた日本人としての表現。これがSeeKだと主張するには十分すぎる1stアルバムです。