スウェーデン・ストックホルム出身のテクノミュージシャン、DJであるAxel Willnerによるプロジェクト。クリック / ミニマル・シーンの総本山であるドイツのKompaktに所属し、これまでにフルアルバム6作を発表。
本記事では1st~3rdアルバムまでの3作品について書いています。
アルバム紹介
From Here We Go Sublime(2007)
1stアルバム。とても美しい昂揚感を伴うトラックを多数収録。キラキラとした明度と柔らかい電子音の質感、軽やかなキックなどが絶妙に絡む。
アブストラクトな拡がりを見せるシンセときれいなメロディがしなやかに絡み合い、4つ打ちミニマルのエンドレスな反復による上昇アプローチで興奮と心地よさを増幅します。
ふんだんに取り入れられている女性のヴォイス・サンプリングは温かな空気感と表情を与えているし、アコギの素朴な響きやシューゲイザーをテクノの領域で鳴らした感触までおもしろい試みも登場。
深い霧に包まれたかのようなアンビエントですが、ビートが強く脈動しているのでかなりノれる。ミニマルによる北欧らしい幻想的桃源郷。削ぎ落された数少ない資源で楽曲をシンプルにきめ細かく磨きあげていくのは相当な手腕です。
彼のアンセムともいえそうな#1「Over The Ice」を始めとして柔らかくも強烈なビート、トランシーな感覚、幻想性と昂揚感、どれもが一級品。
Pitchforkの2007年のベストアルバム50でも第9位を獲得するほど、世界的な評価も高い。同様にミュージシャン筋からの評価も獲得している。
Yesterday and Today(2009)
2ndアルバム。前作の延長戦上といえる作風ですが、6曲で約60分と1曲の長さが増しています。さらにはバトルスのジョン・スタニアーの参加で生楽器の割合とロック感が増量。
美しいシンセのレイヤーとうねるビートが形成する幻想的サウンドスケープ。知的かつ神秘を感じさせる世界が上質に奏でられています。
その上で新機軸といえそうな冷涼なサウンドにはっきりとした歌ものが乗る#2は新鮮。15分を越える#6のようなコズミックなビートの洪水に驚かされます。
さらには生音が巧く硬軟のコントラストをつけているタイトルトラックの#4も秀逸。グルーヴの隆起はしっかりとしているし、アンビエント要素は強いがメロディの色づけは前作より練られている。
綺麗な鉄琴の音?が躍動しカラフルな音磁場を形成する#3も良し。淡い層を成す複雑なテクスチャーを鮮やかに創り上げます。精度の高い従来の作風に新機軸もしっかりと打ち出した作品です。
Looping State of Mind(2011)
3rdアルバム。前作ではクールで冷涼感のあるミニマル・テクノを展開し、バトルスのドラマーもゲストに迎えてロック感も増しながら新鮮味に拍車をかけていました。
本作では1stと2ndで培ったものをベースにした彼らしい美意識が貫かれます。オーガニックなテクノとループ主義を軸に光の海を突き進んでいくような昂揚感に満ちたサウンド。
美しいシンセに硬軟のアクセントを巧みに利用するキック、ダビーなベースラインが絡み、徐々に変相しながら心地よさを増幅していく。
ライヴ・メンバーと共にスタジオで生楽器を加えたという本作は、さらにロック感が増しグルーヴも強化。そこにアンビエントやシューゲイズ要素を巧みにまぶし、ピアノやヴォイス・サンプル等で表情を整えながら美しい軌道を描いている。
これまでの継続でありながら、キメ細やかなニュアンスを加えながら作り上げられるトラック群は流石。特に本作では#2「It’s Up There」のシューゲイズ風のうわものと冴えわたるビートの反復でどこまでも突き進んで行ける。
1stの昂揚感を伴った#4「Arpeggiated Love」もまた最高に気持ちいい1曲。これまで以上に温かさや心地よさが染み渡っているのもまた良い。
反復による陶酔、そして恍惚へ。1stほどの衝撃は無いにしても本作もまたファンの期待には応えてくれた作品です。
Cupid’s Head(2013)
4thアルバム。
The Follower (2016)
5thアルバム。
Infinite Moment(2018)
6thアルバム。