2001年に結成された山形出身のポストハードコア・バンド5人組。本記事は『君と僕』『dawn』の2作品について書いています。
アルバム紹介
君と僕(2006)
2ndアルバム(ミニアルバムという情報もありますが、正式なフォーマットは確かな情報がないので不明)。4曲43分収録。
静と動をダイナミックに行き交うスケールの大きさで聴き手の心を締め付けるポストハードコア。軸となっているのは繊細に哀愁を織り込むツインギターとハードコア譲りの強いグルーヴ。それらが楽曲をしっかりとリードしていきます。
そして、文学的な薫りのする詩を感情をこめて歌いあげ、ポエトリーリーディングを入れながら作品に独自の情感と深みをもたらしています。
envyを引き合いに出したくなるところ音楽性であり、前述の要素を含めて共通点は多い。しかし、もっと混沌としていて歌心があります。
若さゆえの焦燥感、危うさが魅力に感じさせますし、その聴き入ってるとakutagawaの世界に連れ去られてしまう事もしばしば。
本作では特に#4「徒花」がすさまじく、それまでの3曲を布石に用いたかのような感情一杯の力強い絶唱からカオティックな演奏へと雪崩込みます。美しさすらも感じる轟音クライマックスは圧巻。独特のスタンスで戦っていけそうであり、楽しみなバンドのひとつ。
dawn (2011)
結成10年。自らが立ち上げたレーベル、ALPINISTAよりリリースされた3rdアルバム。全6曲約40分収録。自らの持ち味である叙情性を強化しているのを肌に感じる作品です。
丁寧に編み込まれたドラマティックな構成、が聴き手の感性を引きつける。ポストロック的な空間へ拡がっていくギターが顔を出すようになる一方で、剛球をビュっと投げ込むようなアグレッシヴさも忘れずに盛り込んでいます。
時に刺さるようにリアルな感傷と独特の雰囲気を生みだす詩を歌いあげるヴォーカルも魅力。全体としては強まったように感じる叙情性が肝に感じるほどで、混沌が薄まって整理されたのがおそらくそう感じさせる要因。
ですが、エモーショナルな演奏や歌からはピュアな情感も放つようになっているのが新鮮。作品の持つ物語性がさらに引き出されています。
力強い出足から一転して蒼いエモーションと共に哀切と鳴り響く#3「陽が沈む」は見事。美しい旋律が咲き乱れる#5「ラストダンス」から11分にも及ぶ儚くも力強いドラマが紡がれる#6「夜明け前」は全心で受けとめたい締めくくり。
5年という歳月の間には活動休止やメンバー交代も経験し、活動再開後はAs meias、Z、LITE、LOSTAGEといった国内バンドから海外バンドに至るまでの対バンをこなしてきた。その経験値が存分に還元された渾身の作品に仕上がっています。