1996年結成。リーダーのKAPO氏を中心に結成された関西グラインドコア・バンド。”Chaos&Grind”を標榜しつつ型にとらわれない良い曲づくりに全集中し、独自のサウンドを追求してきました。
ヴォーカルにTSUKASA氏が加入してからは歌ものが強化され、歌謡グラインドコアと評されることも。これまでにフルアルバム7作を始め、スプリット作品も多数発表。
本記事は2023年8月リリースの最新作となる7thアルバム『焦がせ』について書いています。
アルバム紹介
焦がせ(2023)
7thアルバム。全10曲約37分。引き続き3LAさんからのリリース。ミックスとマスタリングに原浩一氏を起用。
手を合わせ見つめる先はゆめをみた向こうか。カオス&グラインドの標榜、そこに歌心はあるんか? に真っ向から回答する歌謡。その掛け合わせによる”スウォムる”を専売特許として近作では磨いてきたと思います(『こわれはじめる』『ゆめをみたの』を併せて聴いた感じ)。
本作は歌路線の充実度を増し、明るい曲調もある。しかし、キレイにはまとまらない混沌ぶりは変わりません。散弾銃のようなブラストビートがもたらす曲の締まりとスピード。直感型の昂揚感を煽る一方で、叫ぶと歌うの共闘によって滋味深さをもたらします。
一定の変則性やズレを用いつつもストレートな衝動が貫かれる#1「香り」からSWARRRMを語る上での旨味が凝縮されている。”型にとらわれずに良い曲をつくる”に全集中しているそうですが、グラインドコアの切れ味や暴力性といったものにフォーカスせず、歌の情緒がバンドの独自性を強めています。
またそれに合わせて雰囲気も変わってきており、『偽救世主共 + AGAINST AGAIN』はラスボスっぽかったですが、ここ数作はアニキ的な人情がどんどん厚くなっている。
SeeK『故郷で死ぬ男』を聴いた時は任侠という言葉が似合うと言いましたが、SWARRRMは大和男児的な香りと風格を感じさせます。男の哀歌として成立させる#5「わかってるはずさ」と#7「棘」はその筆頭。
キャッチーな力の抜きどころを設けつつも気迫と熱量はMAX値で駆け抜ける#3「向こうへ」も強力な一撃。衝突をけしかける武闘派としてのフィジカルな面、人情で包み込む精神的な深さの両立が成されています。それは聴き手に寄った表現では決してなく、自分たちの道を極めんとしたがゆえの結果。
”カオス&グラインド”を基に心と体で汗をかく武骨なロック。”あんた”という二人称の多用もSWARRRMらしい情がある。真っ向から生身でぶつかってくる中に盃を交わすような距離感の詰め方もあり、焦がされる鮮烈な衝撃が本作には存在しています。