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アルバム紹介
望郷(2013)
岐阜県出身の4人組ロックバンドによる2年半ぶりの2ndフルアルバム。聴くのは残響レコードからリリースされた最初のミニアルバム『document』以来。メジャーデビューしてからは初のフルアルバムです。
彼等の過去の印象を述べると、9mm Parabellum Bulletのフォロワー的な音楽だというイメージが強く残っている。歌は爽やかですが、初期衝動の高いサウンドが持ち味。けれども、本作で聴かせる音楽はその頃とは違いますね。
冒頭を飾る表題曲「望郷」から驚き。切ないメロディを前面に押し出した序盤から力強く大空に広がっていくようなサウンド。上京を経たことでの人間的な成長がそのままの自分達を表現しており、いい意味で力が抜けています。清流のごとき叙情性、そして真っすぐに歌の表現を追求。衝動に頼らず、感情に訴える音楽に変化してきている。
もちろん#3「西南西の虹」のようなフックの効いた楽曲、ダンサブルな揺さぶりで攻める#7「いたちごっこ」、絶唱絶唱の「蜘蛛の巣」みたいな曲もあるます。それらも作品の幅を広げるという形で機能しています。
#4「時計台」や#5「日記」辺りではUSインディー~エモ風の感傷的なメロディと柔らかな歌に引きつけられ、自身の過去の音と現在の音を上手くリンクさせた#12「小さな食卓」辺りもいい味を出している。
洗練の先にあった、一回りも二回りも大きな成長。特にその真価は美しいエンディングを飾る9分超にも及ぶ壮大な楽曲「溶けない氷」で表れている。
上京後の想いだったり、そこから来る故郷への想いだったりが上手くパッケージされている作品であるのは間違いない。飾らない等身大の彼等が生んだ13曲。じっくりと耳を傾けたい作品です。
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