【アルバム紹介】Peter Broderick『http://www.itstartshear.com』

米オレゴン州ポートランド出身、ベルリン在住の1987年生まれの作曲家/シンガー・ソングライター。本記事では、2008年の『Home』以来、2作目となるヴォーカル・アルバムについて書いています。

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アルバム紹介

http://www.itstartshear.com(2012)

  ポストクラシカル・シーンの代表格といえる存在にまで上り詰めたPeter Broderick。08年の『Home』以来のはっきりとした2作目の歌ものアルバムです。プロデュースはNilf Frahmで、ピアノ他でも参加して盟友の作品を手助けしている。

 これがまた好内容で、ポストクラシカルからモダンなフォークを下地にピーターの滋味深い歌が届けられる。しっとりとしたピアノの旋律、幽玄なストリングスの調べに哀愁のアコギ、アップライト・ベースの丸みのある低音が加わり、穏やかに全てを包み込むようなサウンドが生まれていく。

 さらにはメロディカや鉄琴も用い、エレクトロニクスも効果的に楽曲の情緒を彩っています。なんといってもピーター・ブローデリックの歌声が良く、優しさと渋さがブレンドされている感じで胸の奥底に染みわたる。

 女性コーラスと楽器陣と織り上げていく豊穣なハーモニーは絶品。切なく感傷的で、なんとも懐かしい温もりがあります。細部への丁寧な気配りが冴えわたっていることも優美さに拍車をかけている。

 繊細にして優美なポストクラシカルサウンドを下地に心温まる歌声が響く#1、さらにその流れを受けた穏やかで温かい#2、シンセベースの心地よいビートの上をこの作品のタイトルであるURLを軽やかに口ずさむ#4、より勇壮なメロディを軸に駆け足で突き進んでいき、パーカッションの躍動なども加えて圧倒的な昂揚感を生む#8など良曲ズラリ。

 豊かな曲調、メロディはBon Iver辺りにもひけをとっていないんじゃないかなと。特に#6「Coljn」を推したい。滋味深い歌とフォーキーな序盤から、シガーロス並に天上へ向かって開けていくスケールのある楽曲。ラストの優雅な美しさが素晴らしく、沁みる。

 ポストクラシカルとフォーキーな歌もの路線の融合という言葉では語り切れない、懐の深さとクオリティに納得させられる人は多いはず。

Lirico
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