1990年代中盤~2000年代初頭にかけて活躍したエモ・バンドのメンバーが集結した3人組。2022年から始動。メンバーにはEric Richter (Christie Front Drive)、Jeremy Gomez (Mineral, The Gloria Record)、John Anderson (Boys Life) がそろう。
本記事は1stアルバム『Suburban Eyes』について書いています。
作品紹介
Suburban Eyes(2024)
1stアルバム。全9曲約40分収録。上述の通りにSuburban Eyesは90’sエモオールスターズといえる共同プロジェクトですが、あの頃のエモ的なムーブはあまりしていません。
”私たち3人とも過去のプロジェクトから十分に離れていると思います。過去のことを引き継いでいないというわけではありませんが、クリエイティブ面で言えば、このプロジェクトに取り組んでいる間、良いか悪いかは別として、誰も以前のバンドのことなど考えもしませんでした“とはジェレミー・ゴメス氏の言葉。
まず聴いて感じたのはインディーロックやドリームポップの成分が強めなことです。シンセサイザーの多用、幻想的な音像の占有率が高いことは予想外。ドリームポップ/シューゲイザー寄りの曲調には、合わせてエリック氏のヴォーカルにもエコーをかけて溶け込ませる。
しかしながらロックの動的なエネルギーをバランスよく組み合わせており、MVが公開されている#2「Headlight Torches」の快活なドライヴ感とエレガントなタッチの両立は魅力的。
また一部ではピアノやストリングス、女性コーラス等を持ち込んでサウンドのふくらみを得てます。それでも、展開やスケールをあまり広げすぎず。聴き手との適正な距離感を守ることで聴きやすさも担保しています。
彼等のルーツをたどるような#3「4AM」、シンプルでキャッチーにまとめた#6「Uncomplicated Lives」、サーフロック調のイントロから多様な側面を聴かせる#7「Voices」など注目曲がそろっている。
ラストを飾る#9「Perfect Hands」ではシューゲイザーの雰囲気が強まるエンディングを迎えます。ノスタルジックに思い出に浸るわけではなく、ましてや焼き直しでもない。年を重ねても好奇心と探求心を持って前進すること。それを本作でも証明しています。