ネオクラストやパンク、ハードコアを中心とした品揃えで、アンダーグラウンド界に小さな潮流を巻き起こしているディストロがある。それが、このたび紹介するLongLegsLongArms(通称:3LA)というほぼ個人運営に近い形のディストロ。
世界中に散らばるまだ小さな光しか放てない若手から、今も色褪せることのない名盤までにアンテナを伸ばして販売を続け、リスナーに新しい出会いや興奮、感動を与えるきっかけをつくってくださっている。あくまでアンダーグラウンドを掘り下げるというディストロの制約があるなかで、特にネオクラスト(この新興ジャンルについて、詳しくはこちらをご覧下さい)の普及に尽力されている印象は強い。
また、読み応え抜群の熱心なコラムやインタビューまでを自身で手がけて伝えようとする姿勢も支持されている理由といえるだろう。個人的にもこれまでLight Bearer、Fall Of Efrafa、weeprayなど幾度か注文させていただいた。また、そこからささやかながらネット上で交流もさせていただいている。
そういった縁もあって今回は、3LAのオーナー・水谷暁人さんにメール・インタビューを敢行。3LAの始まりから運営について、ディストロのあり方、そして水谷さんの音楽遍歴や個人的名盤などを伺ってみた。小規模ではあるが、ディストロのこれからを提示するような活動をぜひ注目していただきたいと思う。
インタビュー本編
―― 最初に、LongLegsLongArms(以下:3LA)が始まるきっかけや経緯を教えてください。
当ディストロが始まった直接のきっかけは、アメリカ・フィラディルフィアのエモ・バンド、Algernon Cadwalladerの登場です。彼らの1stアルバム『Some Kind of Cadwallader』をCDで聴き、そのサウンドにとても感動したので、これは友人たちにも薦めなければならない!と強く思いました。
しかし、いざ薦めてみようにもどの店舗にも在庫がない。そんな状況だったので、思い切ってバンドのメンバーにメールでコンタクトを取ってところ、直接売ってくれると言うんです。それなら同じように音源を欲しがっている人もいるだろう、「自分がディストロをしてみるか!」という流れで始まりました。
このように見切り発車で始めたディストロでしたが、自分はwebのデザインとかはできないので、後述する元バンドメンバーであるYacheamが途中から合流。現在は2人体制で運営しています。サイトの見た目や新しい機能の追加だったりは、彼が全部担当してくれていて、自分は業務に専念しています。
本当にささいな事がきっかけで始まったディストロ・サイトでしたが、2010年5月からここまで続けられる事ができました。いつもサポートしてくれるみなさんには、本当に感謝しています。
―― 3LAの品揃えは、オーナー・水谷さんの音楽的趣向が大きく関係していると思ってます。ということで、先に水谷さんの音楽遍歴を教えていただけますか?
はい。音源の99%は自分が良いなと感じたものをセレクトして入荷しています。ですので、 自分の性格・趣向のほとんどが反映されています。音楽遍歴はどこまで遡れば良いのかわかりませんが、自分は茨城の片田舎で育ったこともあって、周りに音楽に詳しい人が全くいなくて、小学生から中学生まではほとんど流行モノの音楽ばかりを聴いていましたね。
中学3年生ぐらいになってバンドブームの波がきて、自分もギターを弾き始め、そこから一気に状況が変わりました。メロコアやヴィジュアル系、青春パンクが周りでは流行っていたのですが、僕はなぜか”メタリカ”にはまったんです。背景としては、ギターが一番うまいやつが一番えらいみたいな風潮があったことが大きいのですが、みんながギター・ソロを練習している中、僕はギター・リフにすごく惹かれました。そのなかでもメタリカのギター・リフは、特に輝いて聞こえたんです。これは他のバンドとは違うぞ!と中学生ながら感じたんですね。
そこからはもうメタル一直線です。主な情報源がBURRN!とヤングギター、そして伊藤政則氏のラジオ”POWER ROCK TODAY”。もうメタルキッズ以外の何者でもなかったです。たまに東京までいってSEX MACHINEGUNSやAZREAL、BLINDMANのライブに行ったりしていました。
海外勢はリアルタイムのシーンは追いかけてなくて、基本的に80’s スラッシュ・メタル、N.W.O.B.H.M(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)ですね。Metallica、Slayer、Testament、Exodus、Sodom、Destruction、Iron Maiden、Motorhead、Led Zeppelin…etc。
もう鉄板ですけど、やっぱり彼らの曲は今でもよく聴きます。高校生になっても世間ではいろいろなブームが来ていたはずですが、当時は全然興味がないので完璧に無視していました。これが僕のメタル時代です。1990年代後半~2001年くらいまでの話です。
そうやって茨城の片田舎でメタルばかり聴いて育ったのですが、いざ東京へでてみると、みんなもっと広く深く音楽を聴いている。20歳でパンクバンド(70’sスタイルのパンクバンド、ここで前述したディストロの共同運営者・Yacheamと出会う)に加入したのですが、当時自分の音楽の聴き方がいかに狭かったか、いかに限られた情報のなかだけで育っていたのかということを思い知らされました。当時は漠然とながら音楽で食って行くぜ!みたいな具体的じゃない夢を抱いていたのですが、「え?俺はこんなんでいいの?ヤバいんじゃない?」と思い、そこからはこれまで聴いてこなかった分を取り戻そう!と必死に音源を聴き漁り始めました。
今思うと、このときのバンドメンバーにレコードのディグの仕方だったり、音源の聴き所だったりというものを勉強させてもらったんだと思います。彼らは僕にとって初めてのレコードマニアの先輩だったんですね。数千枚を超える所蔵のなかから毎週セレクトして、聴いた事のない世界のパンク・バンドをいっぱい聴かせてくれたし、思想や文化も教えてくれたんです。Clash、Ramones、The Jamなどのパンクの基本から7インチしかリリースしていないマニアックなバンドまで・・・。
当時はFirst Alert(京都の70sパンク/パワーポップ・スタイルのバンド)の影響が自分にとっては大きかったので、Pointed Sticks、White Heat、The Times、Upright Citizenは特に好きですね。パンクに限らずパワーポップやネオモッズ系も死ぬほど聴きました。日本人のバンドでは前述のFirst Alertをはじめとして、Teegenerate、Firestarter、Blow One’s Cool、Registrators、Teenage Confidential…etc。挙げていくときりがないのですが、こうして70’sパンクから80’sハードコアへと移り、90’sメロディックを聴いていき、興味はポストハードコアとつながっていくわけです。これが2003年~2008年くらいの僕のパンク時代です。個人的にも濃厚すぎる時間だったと感じています。
2002年くらいから平行して日本のポストロック・シーンのバンドも聴くようになりました。偶然にも大学の先輩や同期(あえて名前は出しませんが、今も第一線で活躍を続けている尊敬すべき友人たち)がそういったバンドで活動していたので、その繋がりからエモ、ポストロック、ポストハードコア、激情と呼ばれる音楽を知っていきました。
途中からでしたが、シーンが成熟していく様も見て取れましたし、ディストロという文化を知ったのもこのシーンに出会ってからです。「音楽を知れば知るほど、自分のなかでバラバラになっていた知識がひとつにまとまっていくこの感覚」は、ひとつのジャンルだけ聴いていたら絶対得られなかったものだと今では思えます。
70年代からのパンクの歴史の上に今日の激情やらカオティック・ハードコアやらネオクラストやらも繋がって、その先もある。体系的に音楽を聴いていくと、少しずついろんな名曲の秘密が紐解かれていく。それは音楽の音以外の楽しみ方のひとつなんだと思います。
―― 水谷さんがあげる人生の名盤5枚とは?
1. First Alert / Circle Line
2. Nine Days Wonder / The Scenery Is In Disguise There
3. Metallica / Kill em’ All
4. DeathSpell Omega / Si Monumentum Requires, Circumspice
5. Ictus / Imperivm
“マイ名盤”という視点だけでは、多すぎて絞りきれません。なので、ディストロや音楽に関わる上で影響を受けている名盤達から厳選いたしました。
―― それを踏まえた上で、3LAディストロのお話に移りたいと思います。3LAといえば、”ネオクラスト”と表現できるぐらいに、その新興ジャンルの日本での普及に大きく尽力されています。当初から、ここを中心にディストロをやっていこうという考えだったのでしょうか?
当初からネオクラストを中心にやっていこうという考えはありませんでした。ディストロのきっかけとなったAlgernon Cadwalladerのようなマイナーなエモやポストハードコア、カオティック・ハードコアのバンドを中心に取り扱いながら、気に入ったバンドだけを入荷していこうと思っていたのが正直なところです。
当時もネオクラスト系のバンドを入荷しているディストロはあったのですが、本格的に取り扱っているところはなかったと思います。ドイツのネオクラスト・バンド、Alpinistの2ndアルバム『Lichtlaerm』がリリースされるときに、twitterのフォロワーの方が「どこにも入荷しないみたいだ」とつぶやいているのを見つけまして、それなら「自分のところで入荷しますよ。」と返信したところから全てが始まりました。
3LAでは、他では取り扱っていない音楽を積極的に取り扱おうとしていただけなので、ネオクラスト自体がどんな文脈にある音楽なのかも、その時点ではわかっていませんでした。しかし、Alpinistを実際に聴いてみると本当に素晴らしいバンドでしたし、調べてみると同じような音楽性で活動しているバンドがまだまだいる。でも日本には全然紹介されていないじゃないか!!ということがわかってきたんですね。
ネオクラストのバンド達はすごくかっこいいし、もっといろんな人に聴いて欲しい、こんなバンドを待ってる人はもっと居るはずだ!と思って自分も情報集めて勉強しつつ、関連バンドを入荷したり、バンドにインタビューしたりしているうちに今のような状況が出来上がっていったのだと思います。
―― 2本の記事が残るネオクラスト考察(その1:レーベルマップ、その2:世界各地重要バンド編)は、大変勉強になりました。それにAlpinistやMasakari、 Downfall Of Gaiaといったネオクラストの新鋭は、3LAで知ったという人も多いのではないかと思いますが、どうでしょうか。
あのネオクラスト考察の記事は、もともとはYacheamから要望があったんです。彼は3LAで取り扱っている音源やシーンに自分程のめり込んでいるわけではないので、その分客観的に物事を見ているし、そういった立場から意見をくれるんです。「3LAのサイトでネオクラスト・バンドが増えてきたけど、どのバンドから聴けばいいのか、どういう聴き方をすればいいのかわからない」と言うんです。
それがわかるようなページがあると良いんじゃないかということを僕自身も納得した上で、「その時点で自分の中で理解しているネオクラストの流れをまとめてみた」のがあの記事になります。間違っている部分もあるかもしれませんが・・・。また、直接感想をいただける方は少ないのですが、3LAを通してその人にとって新しいバンドを気に入ってもらえたとしたら、とても嬉しいことですね。
新しい音楽を発見したときの楽しさって本当に素晴らしいですし、それを共有したいというのは、ディストロの運営理念のひとつとなっています。これからも「自分が知っていることは全部共有しよう」と思ってます。
―― そのネオクラストという中心軸があるなかで、最近では様々なジャンルにアンテナを張った仕入れで、新しい発見や興奮を利用者に提供していると思います。心がけていることは何でしょうか?
重要だと思っているのはその音源やバンド、そしてシーンがこの壮大なパンク・ハードコアの歴史の中で、どのような立ち位置にあるのだろう?という疑問です。シーン全体がビックリマン神話体系だとしたら、バンドや音源はあのチョコのおまけシールのようなもの、つまりこの壮大な物語にアクセスする鍵となります。その鍵が使い古されたものだとしたら、扉をあけてもそこにはおそらく新しい世界は広がってはいない。まだ誰も手にしていない鍵のほうが面白い。
過去の名作、名盤といわれる作品は、この先いつまでも輝き続けるとは思います。ですが、膨張を続けるシーンの中で一番エキサイティングなのは、まだディスク・レビューガイド本にも載らないようなアンダーグラウンドのバンド達で、自分はそうしたバンドを面白いと思っていますし、サポートしたいと思っています。
しかし逆に、アンダーグラウンドにいる彼らもシーンの歴史から疎外された、また独立した存在ではないはずなんです。Algernon Cadwalladerに辿り着くまでに、自分だって数多くのバンドを聴いている。Cap’n Jazzやキンセラ関連のバンド無しでは、おそらく辿り着く事はできなかったと思います。彼らを通過しているからこそ、自分のアンテナがAlgernon Cadwalladerにひっかかることが出来たんです。
シーンはゆるやかにお互いに結びついていて、その導線を明確にしてあげることが、ディストロのシーンへできるサポートのひとつだと思い始めました。それができれば過去の名作、重要バンドと彼らが築き上げたシーンの最前線アンダーグラウンドで活動しているバンドまでを繋ぐ、自分の思う温故知新の理想形が完成するんです。
自分が辿り着いたあるバンドをこの壮大なパンク・ハードコアの歴史の文脈にどう紐づけることができるか。ネオクラストに限らず、それができるようにと心がけています。50%もできているとはとても言えませんが。
―― 先ほどの質問とかぶる部分もありますが、“大手が取り扱っているようなものは扱わない。方向性はあくまでアンダーグラウンドとして掘り下げていく” とのことですが、水谷さん自身はどのようにして、そういったバンドを探しているのでしょうか?
myspaceやBandcampを漁ったり、入荷する音源のレーベルの他のリリース作品をチェックしたりしています。ツイッターでもフォロワーの誰かが良いよって言ってくれているものは、なるべくチェックするようにしています。わざとらしいRTでまわってくるような音源はスルーしてますけど(笑)。
あとは、海外の特定ジャンルに特化したようなマニアックな音楽ブログもチェックしていますが、最近ではバンドやレーベルのほうからわざわざ連絡してくれることも多くなりました。お客さんに教えてもらうことも多いですね。みなさん、本当に詳しいです。
―― 近年の音楽業界では、パッケージでの売上はかなり落ちてきているのが現状です。そんななかで、海外の新人バンドだとBandcampや SoundCloudで作品を全部聴けたり、丸ごとフリー・ダウンロードできちゃったりというのも当たり前になってきています。3LAさんでもこういったバンドを扱うことは多いと思いますが、それでもパッケージとして届ける意義といいますか。その辺りはどうお考えでしょうか?
たしかに日本でもCDが売れない、という話はよく聞きます。しかし、3LAが扱うバンドのシーンにおいては、あまり関係がないことだと思っています。実際にアナログ・レコードの売上は世界的に伸びていますし、自分が体感している感覚の話になってしまいますが、フリー・ダウンロード化の動きも音源の売れ行きを抑制するようなものではなく、むしろ促進しているのではないでしょうか。
音楽はこれからもどんどん自由になっていくと思いますが、レコードが売れなくなったとしても、パッケージ全体を含めての作品だと考えるバンドやリスナーがいる限り、ディストロが存在するならば、それを届ける意義はあります。少しでもサポートしたいという気持ちもありますし、リリースにはそれなりに費用がかかっていますので、「音源は必ず買わなくていけない!」とは思いませんが、ダウンロードだとしても財布に余裕があるのであれば、「手にした音源の対価はバンドやレーベルに還元すべき」だと思います。
ちょっと話がずれてしまいますが、もうフリーであることすら当たり前すぎて、それだけの理由で音楽を聴くということがないので、入荷に関してはフリー・ ダウンロード可能な音源でも全然気にしてません。お客さんも好きなバンドをサポートしたいという気持ち、現物のレコードで所持したいという気持ちをもって購入してくれている印象があります。楽観視はしていませんが、「バンドとリスナーの信頼関係が今後はさらに重要になってくる」のではないでしょうか。
―― 販売するのと並行して、未だ多くの人が知らないバンドへも積極的にインタビューを試みて光を当てています。AlpinistやMasakari、Downfalll Of Gaia、最近ではThe Joint Chiefs of Mathなど今まで10組以上にインタビューをされていますが、仕入・販売だけにとどまらず、バンドをしっかりと紹介してくださっている点は強く支持され ている点であると思います(インタビューを行う基準も教えていただけると嬉しいです)。
最初にインタビューを行ったのはベルギーの激情バンド、Amber Daybreakになります。自分がバンドを好きになる時って、やはりそのサウンドだけではなくて、どんな考え方をしているのか? どんなライフスタイルを送っているのか?などそういった音以外の要素も大事になってくるんです。または好きになった後でそういう要素を知ることで、バンドを更に好きになることも多い。それなりに有名なバンドであれば、日本語のサイト等に情報がある。
けれども、ディストロで扱っているバンドは情報がないマイ ナーどころが多いので、ほとんど日本語テキストがありません。インタビューだったり、歌詞の和訳だったり、そういう活動でバンドの考え方等を伝えることができれば、音源を扱うのとは別の形でサポートができるんじゃないかなと思って始めてみました。
インタビューを行う基準としては。やはり他のサイト等にあまり情報が掲載されていないバンドに光を当てたいと思って選んでいます。とはいえ、初期の自分のインタビューを読むと本当に内容が薄すぎるので、当時の自分を蹴り飛ばしたくなりますね(笑)。今では随分マシになったとは思いますが、バンドの思想の深いところまで入って行くためには、もう少し表現の仕方を知る必要はあると思います。
なかには買い物したことがないけど、サイトを見て楽しんでるよって言ってくれる人がいます。そういうのも嬉しいですね。売切になってる音源のページを残しておくのは、そういった方々のために情報を残しておきたいからで す。
―― これはぜひ質問したかったものなのですが、3LAのこれまでの売れ行きベスト5を教えてください。世間一般のランキングとは全然違うものだと思うので、 興味深いです。
1. Optimus Prime / Optimus Prime(CD)
2. Light Bearer / Lapsus (CD)
3. 人(Human Beings)/ 動物(Animal)(CD)
4. Indian Summer / Indian Summer (12″)
5. Daitro / Laisser Vivre Les Squelettes (LP)
これはサイトのトップページの左側に表示されているランキングそのままです。2009年リリースの音源が堂々一位を飾っているという点では相当異色なのではないでしょうか。2011年の音源も2012年に入っても変わらず売れ続けています。全体的な売れ行きを見ても新譜だから売れる、というパターンはほとんどありません。売れる音源はスローペースにロングヒットするパターンが一番多いと思います。当然、世間一般のランキングとは大きく乖離しています。
―― ちなみに、これまでにライヴやイベント等への出店はされているのでしょうか?
出店は一度もしたことがないです。「誘われることがあればやってみたい」とは思うのですが、今のところ予定はありませんね。
―― リリースを手がけたり、ライヴの企画をされたりといったことは将来的に計画されているのでしょうか?
ライブの企画はありませんが、リリースに関しては水面下で2つのプロジェクトが進行中です。今だから言えることですが、AlpinistのSouthen Lordからリリースされた2in1CD『Lichtlaerm/Minus.Mensch』、そしてAlpinist/Masakariの12″スプリットのレーベル共同リリースなどの話が過去にはありました。
その当時の3LAがまだまだリリースでのサポートをできるほどの力がなかったので、結局その話はなかったことになりました。けれども、今は自分達も少しばかりシーンに何か出来ることがあるんじゃないかと思い、こちらからバンドにコンタクトをとっ て、レーベル活動の準備を進めています。リリースについてはかなり詳細部分まで話は詰めていますが、契約書もない口約束の世界なので、マスター音源をもらうまでは正式発表はできません。また、その後もレーベル活動を行っていくかどうかも現時点では未定です。
―― 僕も購入させていただいたweeprayを始め、最近では日本のバンドの取り扱いにも力を入れている印象を持っています。「3LAの目的/方向性に合っているバンドのみに限定する」という制約はありますが、来年からはさらに増えていくのでしょうか?
過去に何度かお断りしてしまったバンドもいますが、やはり日本のシーンにも目を向けて行かなくてはいけないと 思っています。実際にWeeprayは各地から予想外に大きい反応がありましたし、今後は国内のシーンにもアンテナは張っていくつもりです。いまは海外のバンドを日本に紹介することがメインですが、将来的には「日本のバンドも海外へ紹介できるようになれば」とは思っています。
―― 食べていくための活動ではないと伺っています。また、ディストロをやる費用や時間、労力は大変なものだと思います。それでも水谷さんが、この3LAを動かしていく原動力は何でしょうか?
一言でいってしまうと、『音楽への信仰心』。冗談っぽく聞こえるかもしれませんし、このような回答にひいてしま う人もいるかもしれませんが、正直な答えです。「俺はなんでこんなことをやってるんだろう」と自問自答したりしているうちに、この考えに行き着きました。
自分は誰に仕えているのか、という気持ちでいることで謙虚になれるし、絶対に音楽をがっかりさせたくないなと思いますよね。付き合っているバンド、レーベ ル、お客さんに対して、自分のやれる範囲のベストを尽くす気持ちでいたいと思います。
あと、これはとても大事なことなのですが、食べていくためではないとは言え、適正と判断した利益はとっています。ディストロ運営については趣味のような部分が大きく、完全に採算度外視でやる人もいるみたいですが、そういうことはしたくなかった。誰かが損を被って廻るような仕組みでは、本当の意味でのシーンのサポートにならないというのが僕の考えです。
極端な割引セールや、 在庫一掃セールのようなものをやらないのもそういった理由からです。バンドやレーベルの思いを販売店の都合で安売りしちゃうのも何か違うなと。
―― これで最後の質問になります。2013年の展望を教えてください。
正直、なにがどうなるかわかりません。ネオクラストも小さなブームなのですぐ終わるかもしれないですし、どういった流れと合流していくかも予想がつきません。なんにせよ、ディストロとしては2013年も新しい音楽との出会いを求め、良い旅ができれば良いと思って いますので、「自分のやれることをやっていくだけ」です。もしリリースのプロジェクトがうまくいったならば、バンドを招聘することもできるかもしれないの で、その辺りは自分自身も楽しみにしています。
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