J-HR/HM界隈で一時代を築き、後のヴィジュアル系にも多大な影響を与えた孤高のバンド、DEAD END。彼等が主催するイベント『四鬼夜行』が約2年ぶりに開催となった。26年も前からの歴史あるイベントの五喰(”ごくい”と読む) で、今回はBorisとcali≠gariを迎え、赤坂ブリッツでの三つ巴。3バンドともに敬愛する自分にとっては、これは是が非でも見たいラインナップだったので、足を運んでみた。DEAD ENDが復活して以降に開催された2010年の三喰、2011年の四喰では、Pay money To my PainやGASTUNK、COCOBAT、lynch.が同イベントに出演しているが、五喰でこの3バンドが顔を揃えたというのは本当に驚きである。
ロックを基点にあらゆる音楽の可能性を追求し、世界的なバンドとなったBoris。そしてリスナーを弄びながら、どこにも染まらない異能派集団として、唯一無二の個性を持つcali≠gari。共に90年代から活動しているこの2組を迎えた本イベントに心躍った人は多いことだろう。僕もその一人である。関係性でいえば、DEAD ENDのMORRIE御大は、Borisが出演した昨年のleave them all behindに訪れているし、Borisは最近のライヴにてDEAD ENDの『冥合』のカバーを披露している。cali≠gari、Borisだと今年初頭に出た東京酒吐座のアルバムに、それぞれのメンバーがゲスト参加していることかな。
ちなみに赤坂BLITZへは初めて来ました。TBSのおひざ元ということで、赤坂サカスでにぎわいを見せていたが、BLITZの前で並んでいる方々を見ると、概ね黒い。それに、どのバンドもそれなりにキャリアを重ねていて30代後半~40代なので、お客さんの平均年齢もやや高めだったかな。20代後半の自分が気持ち若めに感じた(笑)。会場内に入ってすぐの場所には、親交のあるAcid Black CherryやHYDEからのお花が飾られており、DEAD ENDがいかに大きな存在であるかを物語る。
Boris
何食わぬ顔でそそくさと定位置に歩くフロントの2人、対照的にドラマーのAtsuoさんはステージ中央で拳を掲げてアピール。そう、トップバッターは大方の予想通りにBorisであった。オープニング曲は「COSMOS」。噴き出る大量のスモークの中で、サイケデリックな旋律とたそがれた歌声が響きだし、やがてアウェーの雰囲気をものともしない轟音が立ちあがる。第4のメンバーともいえる栗原ミチオ氏を、家庭の事情で今年の頭から欠く状況ではあるのだが、僕としては2007年のISISの来日ツアー以来6年ぶりぐらいに見る、3人編成のBorisが新鮮でもあった。2曲目の「虹が始まるとき -Rainbow-」で、wataさんが栗原氏の代わりに、妖艶かつノイジーなギター・ソロを弾いていたのは印象的なシーンのひとつである。
続けての「PINK」から「新曲」を挟み、「STATEMENT」までは、ロックンロールな快感に痺れるような楽曲を並べていて、その勢いに持っていかれる人もいたが、思っていたほどは盛り上がらなかったかな。以前のI’LL BE YOUR MIRRORよりもアウェーな雰囲気で演奏するBorisを見るのは初めてだから、これにはちょっと驚き。ちなみに新曲は、序盤はスピーディに展開しながらテンポを落とし、中盤から後半にかけてのサイケデリックなwataさんのギターが脳味噌を掻き乱すようだった。
「今日は、ここに立っていることが非常に光栄です。ありがとうございます。」というAtsuoさんのMCから最後は、バンドの代名詞ともいえる「決別 -farewell-」。個人的には、DEAD ENDの「冥合」のカバーで締めてくれるかなと思ったら願い叶わず。ただ、今宵の「決別」は轟音はそれほどでも無いにしても、ライティングとスモークの演出が実に見事であり、ステージ上の3人がいつも以上にアートの様に感じられ、音も重なっての総合芸術のような素晴らしさがあった。時間にして約35分だったが、初見の人に対しても、十分にBorisの存在を知らしめることができたステージだったのではないかと思う。
‐‐‐setlist‐‐‐
1. COSMOS
2. 虹が始まるとき -Rainbow-
3. PINK
4. 新曲
5. STATEMENT
6. 決別 -Farewell-
cali≠gari
20分ほどのインターバルを挟んでcali≠gariの参上。武井さん → 研次郎さん → 青さん → 石井さんと順番にステージに出てくるたびに黄色い歓声があがり、Boris以上の熱気に包まれることを登場から予感させる。先月の日比谷野音公演と同じく生まれ変わった「その行方 徒に想う…」でカリガリのエンターテイメントな時間が始まると、「ハイカラ・殺伐・ハイソ・絶賛(ニュウver)」でイントロから盛り上がりまくって、「娑婆乱打」では途中の研次郎さんのベースのタッピング・ソロが炸裂。この後も「トイトイトイ」「散影」とアップテンポの楽曲が続き、大御所の前にこんなに盛り上がっていいのかよというぐらい、客席は大きく揺れた。
ふいに入ってきた「空想カニバル」は、スタジオ音源よりも浮遊感が増してシューゲイザーの色を強め、石井さんのセクシーな歌声がまた絶妙に鼓膜をくすぐる。まさかの選曲で、これは本当にびっくりした。しかし、そんな心地よい雰囲気を台無しにするように、研次郎さんのMCが入る(笑)。「今日はDEAD ENDと一緒でみんな緊張していて絶対にしゃべれないから、俺しかしゃべらないぜぇよろしくーっ。小学校6年生の時に美術の授業で、『DEAD LINE』のジャケ写を書きましたぁーっ!」と楽屋にいるDEAD ENDへの愛を叫び続けていた。
大御所の前にも関わらず、非常に汚い曲コールの「クソバカゴミゲロ」からは狂ったセクションに突入し、「ギロチン」までノンストップで暴れ系ヤケクソ楽曲を繰り出して客席に燃料を送り続ける。そして、最後は当然の様に「サイレン」が異様な空間を作り出す。脳内にこびりつくようなサイレンの音に、真っ赤な照明が混乱を助長させ、石井さんと青さんが奇声のような雄叫びで応戦。頭が割れそうなほどに狂ったクライマックスを演出し、彼等はステージを後にした。約40分ほどだったけど、バンドの音楽性が凝縮されたセットリストでcali≠gariの振り幅の広さを感じられて良かった。
‐‐‐setlist‐‐‐
01. その行方 徒に想う…
02. ハイカラ・殺伐・ハイソ・絶賛
03. 娑婆乱打
04, トイトイトイ
05. 散影
06. 空想カニバル
07. クソバカゴミゲロ
08. JAP ザ リパー
09. マネキン
10. ギロチン
11. サイレン
DEAD END
「DEEP -流星白書-」をSEにサポート・ドラムの山崎慶(ひとりだけ若い!)、ギターのYOUにベーシストのCRAZY COOL JOE、そしてMORRIEが順番に登場し、切って落とされたDEAD ENDのライヴ。幕開けの「水晶獣」から重鎮の貫禄は充分で、DEAD ENDを初めて見た僕に強烈なインパクトを刻むことになった。
今宵が2013年の初ライヴということだが、全く心配は無用。演奏隊のメタリックなサウンドと烈しくも妖艶なMORRIE御大のヴォーカルは、そこらのバンドが尻込みしそうになるぐらいに強烈で、鳥肌が立つほどの凄みを覚える。その上でダークな艶めきや熟練した味わいがあり、50手前の年齢は、まるで感じさせない。特にMORRIEの存在感は、ずば抜けている。でも、MCは隠すことも無く普通に関西弁を使ってて驚いた。あの容貌で「ガンガン行くでー」とか言われた時のギャップは・・・(笑)。
ライヴは、昨年発表の『Dream Demon Analyzer』からの楽曲が大半を占める。エッジの効いたリフで攻め立てるメタル・ナンバー「Conception」や「SSS」から、メロウな旋律と共に闇の彼方に堕ちていく「Angel」、流麗なサウンドと心地よい疾走感が艶やかな色彩をもたらす「夢鬼歌」など、現在のバンドがいかに充実しているかを物語っていた。そして、twitterの予告通りに、新曲も披露(多分、「Changeling」というタイトル)し、ダークでシリアスな歌ものが丹念に響きわたる。本編のラストでは、前作『METAMORPHOSIS』からのスラッシュ・チューン「Devil Sleep」が、全てを蹴散らし、会場を興奮の坩堝へと陥れた。
そして、アンコールでは、1stアルバムに収録されている「Sacrifice Of The Vision」をまず披露。スタジオ音源の刺々しい声からは、今のMORRIE節が効いた形で生まれ変わっていて、伸びやかな勢いを増した感じが新鮮であった。続けて、今日の出演者と一緒にセッションへと突入。まずはMORRIE御大が一人ずつ紹介しながらBorisのAtsuo、cali≠gariの4人をステージに迎えるのだが、その際に研次郎さんは”胡散臭い”、石井さんは”オシャレ”という言葉を添え、会場を笑わせて和ませる。それにしてもステージに立つcali≠gariの面々が、DEAD ENDを前に緊張しすぎてるのがこちらにも伝わってきて、逆に微笑ましい。AtsuoさんもBorisを代表して話す機会をもらっていたが、「光栄です。」とこのイベントに参加できたことへの感謝を再び語っていた。
肝心のセッションの楽曲は、3rdアルバム『Shambara』に収録されている「Blind Boy Project」という曲。なんでも、そのアルバムの曲でファン投票をやって最下位になった曲というのを理由に、今まで一度もライヴでやったことが無いそうな。しかし今宵に封印は解かれ、トリプル・ドラム、ツイン・ベースにツイン・ギター、MORRIEと石井秀仁というあまりにも豪華な9人の布陣で、25年ぶりに日の目を見ることになった。特にサビでのカリスマの2人のヴォーカリストの掛け合いが凄くかっこよく、こんな夢のようなセッションを目撃できたことに、大きな満足感を覚えるのであった。
‐‐‐setlist‐‐‐
01. 水晶獣
02. SSS
03. Calamity
04. 摩天楼ゲーム
05. Angel
06. 夢鬼歌
07. 新曲
08. Conception
09. Blackout
10. Seiren
11. Devil Sleep
EN1. Sacrifice Of The Vision
EN2. Blind Boy Project(with cali≠gari & Atsuo (Boris)
こうして、3時間半にも及んだライヴは終了。数多の人々から熱烈な支持を受ける三者が、それぞれの独創的な世界を演出し、素晴らしいイベントとなった。終演後には、DEAD END Tribute ALBUMの告知第2弾をスクリーンにて発表(最初、音が出てなくて音量を大きくするアイコンが出てきたのは笑った)。本日の出演者であるBoris、 cali≠gariを始めとして、多くのアーティストの参加が発表され、次々と映し出される名前に歓声が上がっていた。
MORRIE御大が「四鬼夜行、今回は約2年ぶりだったけど、できれば毎年やりたい」と仰っていたので、来年の開催を期待したいところですね。間違いないメンツが揃うイベントだろうし、驚きのラインナップで心躍らせてくれることでしょう。っていうか、トリビュート出すんだからBUCK-TICKのように、フェスを開催していただける嬉しいんですが・・・。是非とも、御検討を!
↑の写真2枚は、物販での購入物。イベントTシャツ、Borisのライヴ会場限定発売音源『performing “flood”』、cali≠gariの限定シングル『春の日(CD盤)』
おまけで、赤坂感を出してみる写真2枚です。