池下CLUB UPSETではenvyの『Atheist’s Cornea』レコ発名古屋編、さらにはkillieが久しぶりの来名公演を名古屋ロックンロールで行う、そんな何年かに一度クラスのハードコア三昧の5月16日。頭を抱える選択肢の中、自分は名古屋のポストハードコア・バンドのHeliostropeが、初となる自主企画を上前津CLUB ZIONで開催するので、そちらに足を運んだ。ご縁・繋がりというのを信じる形で。
キツい日程被りだったので、集客的には苦戦と言わざるをえない状況であったが、今回の自主企画をHeliostropeと親交の深い3組(さらに食事でKUMA’S KITCHENが土手煮で胃袋攻め)が盛り上げる。まずは、名古屋のAvalanche Effectが先陣を切り、スポーティな叙情系ハードコアで気合注入。体調があまり良くないとMCで言ってたわりには、メタリックなリフと絶叫とスピードでかなり飛ばしていたのはご愛嬌といったところか。
続いて、本日を含む3度の名古屋公演全てでHeliostropeと対バンしている東京のTHE FATAL ERRORが、盟友として熱演。TakenやMisery Signalsの香りを放つ、メロディックかつアグレッシヴなサウンドが衝撃波を走らせていく。ギタリストやドラマーの熱いメッセージが添えられてから演奏した新曲2曲を含むパフォーマンスは、特にHeliostropeへの感謝と想いが詰まったものだった。そして、3番手の滋賀の5PM PROMISEがこちらも叙情系ハードコアで応酬。攻撃的に煽るサウンドを軸にして、フロアをこの日一番に湧かせたバンドであったのが印象的だ。
Heliostrope
3組からバトンを受け、緊張の面持ちでセッティングを終えると、21時ぐらいからHeliostropeのライヴがスタートする。この日はレコ発自主企画で大トリということもあり、1st EP『Configuration』の曲順通りの全曲演奏。「星を詠む人」「Heart Auscultation」と序盤から持ち味を十二分に発揮していく。ポストロックに寄ったメロディの優しさ/美しさからの轟音激情の奔流。5PM PROMISEのシャツを揃って着た山口くんと宮下くんの2人を中心に、メンバー全員が緊張と戦いながら音楽の持つ力をステージで表現している。
そして、キーボードによる小インスト「翡翠」を経ると、静と動のコントラストが一際眩い「Struggle a Flow of Red River」へ。人生の険しさを表現したようなダークでヘヴィなサウンドから、慈愛に満ちた叙情パートへの移り変わりに今宵も心にくるものがあった。前回のライヴで見た影響も強いけど、EPの中ではこの曲が一番好みだと改めて実感する。
さらには、2曲でひとつというイメージで制作されたという「Sloughs Lost into Shower of White」~「The Bottom of White Sphere」が美しいクライマックスを演出する。クリーントーンのギターが光を増幅していくような(それに合わせて照明が明るくなっていく点も良かった)前者、詩読を担当することの多い宮下くんによる咆哮やメタリックなリフが入ったりするのが印象的な後者。これらは初期に制作された楽曲だというが、既にHeliostropeの表現したい内容が詰めこまれている。突き上げる衝動、沸き上がる感情を抑えられない、そんなラストであった。
約30分に及んだ演奏を終えると、山口くんによる熱のこもったMCが入る。本日の出演者や会場に集った人々への感謝を述べつつ、「様々な困難や壁に直面した時に、今日のこの時間がそれを乗り越えるためのものになって、明日以降の力になればいいなと思います。」という言葉が力強い印象を残した。
「私達の音楽が、あなたの背中を押す力になることを祈ります。」これは、彼等の1st EPの歌詞カードに記された一説だが、 人々にとっての”これからの希望となる音楽”を目指し、Heliostropeは今後も歩んでいくはずだ。しかし、今日も「山口くんは何でホイホイ(twitterのアカウント名)なんだろう」って聞くの忘れた・・・(汗)。
‐‐‐setlist‐‐‐
01.星を詠む人
02.Heart Auscultation
03.翠玉
04.Struggle a Flow of Red River
05.Sloughs Lost into Shower of White
06.The Bottom of White Sphere